TCFDの提言に沿ったシナリオ分析と気候変動への適応の取組

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社

業種:金融業、保険業
掲載日 2022年9月21日
適応分野 産業・経済活動

会社概要

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社ロゴ

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社は、三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社を中核とする、保険・金融グループの持株会社である。国内損害保険事業を基軸に、国内生命保険事業、金融サービス事業、海外事業、リスク関連サービス事業を展開し、財務健全性の強化、国内損保事業の収益力の向上、海外展開のための基盤整備などに取り組んでいる。

気候変動による影響

2020年の世界の平均気温は産業革命前の平均から約1.2℃上昇しており、今後地球温暖化の進行を緩和するための取組みが進まない場合、2100年の平均気温は産業革命前から4℃以上上昇すると言われている。地球温暖化が進行すると自然災害が激甚化すると予測されており、自然災害による支払保険金が大きく増加する可能性がある。

取り組み

当社グループでは、気候変動による影響を大きいものと認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の考えに2017年12月に賛同した。その後、TCFDの提言 に沿った開示を進め、2021年8月に気候関連の財務情報を、TCFDレポートとして、公表した。本情報開示においては、気候変動リスクを物理的リスクと移行リスクに分類している(図1)。
物理的リスクについては、当社を含む持続可能な保険原則(PSI)の署名保険会社 20 社以上が参加した国連環境計画金融イニシアティブのプロジェクトで開発した評価ツール(注1)を用いた。そして、台風による保険金の支払いが発生する国内の損害保険契約(注2)について、地球温暖化の進行に伴って勢力等が変化した台風が支払保険金に与える影響を確認した。具体的には以下の2点の変化による支払保険金の増加の可能性を確認した。

●台風自体の変化
4℃シナリオ(RCP8.5)(注3)では、 2050 年における台風の支払保険金は、「勢力」の変化によって約+5%~約+50%、また、「発生頻度」の変化によって約-30%~約+28%、各々変化する可能性があるという結果となった。

●台風による高潮の変化
2℃シナリオ(RCP4.5)(注4)、4℃シナリオ(RCP8.5)では、2030 年及び 2050 年における支払保険金は、いずれの場合も数%程度増加する可能性があるという結果となった。

当社グループは、国連環境計画金融イニシアティブのプロジェクトに基づく分析手法等も参考にしつつ、引き続き、台風や洪水等の気候変動の影響を評価する手法の検討を進める。さらに、気候変動の影響も踏まえてリスクの保有量をコントロールすることで、財務の健全性の維持に必要な資本を確保していく。
また、自然災害に対する保険の提供や、自然災害による被害や損失をなくす、または軽減するためのサービスの提供を進めていく。
例えば、自然災害による被害が発生した際、AIやドローンを活用した損害調査を行い、被害にあわれたお客さまに、いち早く保険金をお支払いする取組を行っている。また、被災建物棟数や被災率を市区町村毎に予測し、リアルタイムで地図上に表示するWebサイト「cmap.dev(シーマップ)(注5) 」を一般公開し、被害拡大の予防等に活かしてもらっている。

効果/期待される効果等

当社グループでは、気候変動の影響も踏まえて、リスクの保有量をコントロールすることで、財務の健全を図るとともに、社会が気候変動の緩和や適応を進めていくための商品・サービスを提供していくことで、社会との共通価値を創造していく。

 気候関連のリスクの分類

図1  気候関連のリスクの分類

脚注
(注1) IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCPシナリオに基づいて、台風の発生頻度や勢力、高潮等の変化を定量的に評価するツール。
(注2) 火災保険、海上保険、傷害保険、自動車保険等。
(注3) 2081-2100年の世界平均気温が、1986-2005年と比べて2.6-4.8℃(平均3.7℃)上昇するシナリオ。2046-2065年では平均2.0℃の上昇。
(注4) 2081-2100年の世界平均気温が、1986-2005年と比べて1.1-2.6℃(平均1.8℃)上昇するシナリオ。2046-2065年では平均1.4℃の上昇。
(注5) リアルタイム被害予測ウェブサイト cmapについて
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(https://www.aioinissaydowa.co.jp/corporate/service/cmap/)
国立研究開発法人国立環境研究所A-PLAT適応ビジネスの事例
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(https://adaptation-platform.nies.go.jp/private_sector/database/opportunities/report_077.html)

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