Lake District National Park
湖水地方国立公園
確実性と影響の重大性の評価指標に基づいた国立公園の気候変動リスク評価
掲載日 | 2017年4月14日 |
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分野 | 農業・林業・水産業 / 水環境・水資源 / 自然生態系 / 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活 |
公園概要
湖水地方国立公園は英国の北西部に位置し、山や川、湖、海岸等の地形に富み、多様な動植物が生息する面積229,200 haの国立公園である。人口は約42,000、主要産業は農業、観光業となっている。公園の運営は、湖水地方国立公園管理局(Lake District National Park Authority)が担っている。
適応に関する取り組みの概要
気候変動のリスク評価
- 英国気候予測(UK Climate Projections 2009: UKCIP09)による気候変動の予測結果を参考に、以下の気候影響を考慮してリスク評価を行った。
- 冬季の雨量増加を含む極端な気象現象
- より高所への生息地の移動、移動する種に依存している種の減少
- 種の減少、今まで国立公園に存在していなかった種の増加
- 河川や湖の変化(水位、水質、養分状態)
- 水需要の増加
- 森林の変化(暴風雨による被害、干ばつ)
- 泥炭の乾燥
- 侵食や山崩れの加速
- 国立公園管理局連合会(English National Park Authorities Association)の気候変動ワーキンググループが各国立公園管理局のために作成した、気候変動のリスク・機会を整理するための表を用いた。この表は、1.地形、2.種の多様性、3.歴史的環境、4.アクセス、リクリエーション、観光、5.地域文化、経済、6.農業、土地管理、7.国立公園管理局の事業継続性の七つの分野について、気候変動リスク・機会を整理し、確実性と影響の重大性より評価し、対策を記入する形式になっている(表1)。
表1 気候変動リスク評価の表の一部(種の多様性について)
(左から、リスク/機会の内容、リスク評価結果(2020年代、2050年代、2080年代)、現在・計画中・将来の適応策) リスク評価結果のうち、赤はリスクが高い、オレンジ色はリスクが中程度、緑はリスクが低いことを示す。出典- Adapting to Climate Change in the Lake District National Park: Initial Assessment of Risks, Opportunities and Actions, 2012, Lake District National Park Authority, p.13
- リスク評価の結果、短期的(2020年代)に大きなリスクはなかったが、中期的(2050年代)にリスクが高くなる項目は以下の通りであった。
- 洪水等の極端な事象により、公共交通機関や交通インフラが被害を受けたり、国立公園に対する人々の認識に悪影響を与えたり、働いているスタッフや一般の人々の安全が脅かされるリスク。
- 気温の上昇や豪雨の増加により、動植物の分布やバランスが変化し、種の構成や生息条件が変化する。極地高山植物などいくつかの種が消滅し、今まで存在していなかった種が繁殖する。相互依存している種への影響。
- 山火事の頻度が増えたり規模が大きくなることによる、林業、畜産業、農業への影響。樹木の炭素貯蔵効果への影響。
- 洪水対策や極地高山植物の保全等、気候変動以外の分野でも緊急性の高い問題については、既に取組みが進められている。
- 湖水地方国立公園パートナーシップ(湖水地方国立公園管理局、カンブリア州議会、カンブリア州内のバラ議会、環境庁、イングリッシュヘリテッジ、ナショナルトラスト等24団体で構成)が策定するパートナーシッププランは、国立公園の管理計画として位置づけられており、現行のパートナーシッププランには気候変動対策として、温暖化ガス排出削減の取組みが盛り込まれている。今回検討された適応策については、次回のパートナーシッププラン改定時に盛り込む予定としている。