インタビュー地域気候変動適応センターVol.2 茨城県

茨城県地域気候変動適応センター
気候変動適応研究と教育の共進化

取材日 2019/3/14
設置機関 茨城大学
対象
  • 茨城大学 地球・地域環境共創機構 特命教授 三村信男
  • 理工学研究科(工学野) 都市システム工学領域教授
    茨城県気候変動適応センター センター長 横木裕宗
  • 地球・地域環境共創機構准教授
    日越大学大学院気候変動・開発プログラム准教授
    茨城県気候変動適応センター 田村誠

<インタービュー動画 2021年3月撮影>
三村特命教授からは日本の適応推進における背景と今後の展望について、横木先生・田村先生からは県の重要分野である農業と防災における適応推進について話を伺いました。動画は三部作で配信しています。

設立背景

茨城大学では、気候変動の影響予測に基づく適応技術・政策・ビジョンの提示と適応策を担うことを目的として地球変動適応科学研究機関(以下、ICAS)を2006年に設置しました。これまで、環境省研究総合推進費S-8「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」など、国の様々な研究プロジェクトに参画し、気候変動影響評価や適応策に関する研究および教育を行ってきました。その過程で茨城大学と国立環境研究所(以下、NIES)は密接な連携を築き、2014年3月にはS-8プロジェクト全体で『地球温暖化「日本への影響」』を発行しました。2018年6月に気候変動適応法が成立したのは、これまで気候変動適応の必要性を熱心に訴えかけてきた研究者および関係者たちの成果だと思います。このような背景もあり、茨城県地域気候変動適応センターの公募に手を上げさせていただきました。

全国で初めて大学機関として地域気候変動適応センターを設置

国立大学が担うというのは新たなチャレンジだと考えています。地方環境研究所とも異なるのは、大学は幅広い分野をカバーしており、環境問題や気候変動に特化するだけではなく、文系理系を問わない研究者が在籍していること、学生への教育活動があることです。
今後は気候変動適応に関する県の情報拠点として、将来の影響予測や適応策検討を実施するだけではなく、その成果をいかに社会実装するかが重要だと考えています。学生にも積極的に演習や卒論などで地域に携わってもらえる機会が増えれば、地域における適応が推進されるのではと期待しています。このように、「研究と教育の共進化」を図りながら、地域の気候変動適応に貢献したいと思います(図)。

体制図

図:茨城県地域気候変動適応センターの概要

茨城県との連携

これまで県と大学は様々な研究プロジェクトを協働しており、県職員には本学卒業生も多いことから良好な関係を築いています。気候変動影響と対策については、これまでも研究成果を県にインプットする機会もありましたが、地域気候変動適応センターはこうした体制をより強化していくものだと考えています。
まず、環境政策課以外の行政関係者の気候変動適応への理解を深めることが必要です。意見交換会やワークショップなどを開催して、関係各課から情報を提供してもらう場を作りたいと考えています。県とキャッチボールのように何度もやり取りを重ねながら、適応について言葉の意味合い、通常業務との整合性や課題などを互いに認識して共有するところから始めたいです。その次のステップとして、実際に使える適応策や計画の策定を支援したいと考えています。

市町村への支援、県民への普及啓発

市町村においては、行政担当者への適応に関する普及啓発を図ることから始め、地域で気候変動に身近な農家などを対象にヒアリングやインタビューを実施したいと考えています。県民へのアウトリーチとしては、既に市民講座や2018年度から毎日新聞「+2℃の世界」連載に企画協力を行っています。2019年度以降も市民講座、メディア等の取材・企画に継続的に協力しながら、気候変動や適応策について発信をしていきます。

今後の取組

ICASには60名を超える研究者が兼務しており、そのうち専任スタッフは約10名です。地域気候変動適応センターを担うには、新たな研究プロジェクトや活動推進(市民講座、WEB構築等)の予算を確保しながら、研究者だけでなく様々なコーディネーターや人材育成が求められると思います。適応人材育成については認定制度を設けるなどの方法もあるかもしれません。
茨城県の地域気候変動適応センターとしての模索は続きますが、これまで実践してきた取組や研究成果を活かし、地域の気候変動適応という重要な課題に取り組んでいきたいと思います。

この記事は2019年3月14日の取材に基づいて書いています。
(2021年10月8日動画掲載(2022年1月11日動画英語版掲載) / 2019年4月19日掲載)

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