よくあるご質問「施策の推進」

これまでに寄せられた質問への回答等を掲載しています。その他の質問については、お問い合わせフォームよりお知らせください。

気候変動適応法とはどのような法律ですか。

気候変動に対処し、国民の生命・財産を将来にわたって守り、経済・社会の持続可能な発展を図るためには、温室効果ガスの長期大幅削減に全力で取り組むことはもちろん、現在生じており、また将来予測される被害の回避・軽減等を図る気候変動への適応に、多様な関係者の連携・協働の下、一丸となって取り組むことが一層重要となっています。こうした状況を踏まえ、気候変動への適応を初めて法的に位置付けたものが気候変動適応法です。平成30年6月13日に公布され、同年12月1日に施行されました。気候変動適応法の概要は以下の通りです。

  1. 適応の総合的推進
    • 国、地方公共団体、事業者、国民が気候変動適応の推進のため担うべき役割を明確化。
    • 国は、農業や防災等の各分野の適応を推進する気候変動適応計画を策定。その進展状況について、把握・評価手法を開発。(閣議決定の計画を法定計画に格上げ。更なる充実・強化を図る。)
    • 気候変動影響評価をおおむね5年ごとに行い、その結果等を勘案して計画を改定。
  2. 情報基盤の整備
    • 適応の情報基盤の中核として国立環境研究所を位置付け。
  3. 地域での適応の強化
    • 都道府県及び市町村(東京23区を含む。)に、地域気候変動適応計画策定の努力義務。
    • 地域において、適応の情報収集・提供等を行う拠点(地域気候変動適応センター)機能を担う体制を確保。
    • 広域協議会を組織し、国と地方公共団体等が連携して地域における適応策を推進。
  4. 適応の国際展開等
    • 国際協力の推進。
    • 事業者等の取組・適応ビジネスの促進。
2020年の12月に気候変動影響評価報告書が公開されましたが、どのような内容が記載されているのでしょうか。

気候変動影響評価報告書(総説)は、気候変動適応法第10条に基づき、気候変動及び多様な分野における気候変動影響の観測、監視、予測及び評価に関する最新の科学的知見を踏まえ、環境大臣が中央環境審議会の意見を聴き、関係行政機関の長と協議して作成した気候変動影響の総合的な評価についての報告書です。2015年の中央環境審議会による意見具申から5年後にあたる2回目の気候変動影響評価であり、法に基づき作成された初めてのものとなります。
本報告書では、各分野における気候変動影響の概要に加えて、気温や降水量などの観測結果と将来予測、影響の評価に関する今後の課題や現在の政府の取組をまとめています。この他、報告書の作成に併せ、各分野における気候変動影響に関する詳細な情報をまとめた資料「気候変動影響評価報告書(詳細)」を参考資料としてまとめています。

なお、「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について(意見具申)」が公表された時に比べ今回の評価では、評価対象となる分野・項目の分類体系において、20の大・小項目が新たに追加もしくは細分化され(総説P34-35参照)、重大性、緊急性、確信度のいずれも高いと評価された7つの項目において確信度が向上し(総説P1-2参照)、3つの項目において新たに「特に重大な影響が認められる」と評価され(総説P1-2参照)、5つの項目において新たに「対策の緊急性が高い」と評価されています(総説P1-2参照)。

気候変動影響は様々な分野で生じることから省庁を横断した連携が必要とされていますが、各省庁はどのように連携しているのでしょうか。

気候変動適応法(平成30年法律第50号)及び気候変動適応計画(平成30年11月27日閣議決定)に基づき、関係行政機関相互の連携協力の確保の下、気候変動適応に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、気候変動適応推進会議が開催されています。推進会議は、環境大臣・環境副大臣を議長・副議長とし、内閣官房・内閣府・金融庁・総務省・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省・防衛省の審議官・局長・官房長が構成員となり、関係府省庁間の必要な調整を行い、連携協力をしながら政府一体となって気候変動適応に関する施策を推進するとともに、その進捗状況を定期的に確認していくこととなっています。

また、環境省と内閣府は、想定を超える気象災害が各地で頻発し、気候変動はもはや「気候危機」と言える状況の中、こうした時代の災害に対応するためには、気候変動リスクを踏まえた抜本的な防災・減災対策が必要であるとの認識の基、気候変動対策と防災・減災対策を効果的に連携して取り組む戦略(気候危機時代の「気候変動×防災」戦略:環境大臣・内閣府特命担当大臣共同メッセージ)を取りまとめ公表しています。

なお、各省庁それぞれの取組についてはA-PLATの関係省庁の適応に関する取組にて確認することができます。

様々な分野において国際会議等の場で最新の研究や実践事例について共有や情報交換が行われていると聞きます。適応分野でもそのような国際会議はありますか。

世界各国の研究者や政策立案者等が参加するAdaptation Futuresや、ヨーロッパ諸国を中心に開催されるEuropean Climate Change Adaptation Conferenceなどが知られています。アジア太平洋地域では、適応の実践者が集まり知見や経験を交換するものとして、Asia-Pacific Climate Change Adaptation Forum(APAN Forum)等が開催されています。

また、自然災害の分野では2020年に「気候変動×防災」国際シンポジウムがWeb開催されており、農林水産業の分野でもAgriculture and Climate Change Conferenceなど複数の国際会議が開催されています。

地域気候変動適応計画を策定する予定ですが、まずは何から始めればいいのでしょうか。

A-PLAT「地域の適応ページ」の地域気候変動適応計画の項目に様々な情報が掲載されていますので、参照ください。

まずは地域適応計画策定マニュアルを参照し、STEP1に記載されている計画策定のための準備を始めましょう。続くSTEP2から7を読めば実際に計画策定に必要な作業を確認することができます。また、計画策定ガイドマップでは各STEPで利用可能な資料やツール等が紹介されているのでご覧ください。日本の都道府県や市区町村で既に作成されている地域気候変動適応計画を参考にすることもできます。

地域気候変動適応計画- 計画作成支援ツール -を使えば、計画策定に必要な情報を自動でひな型に出力することもできます。
地域気候変動適応計画策定・改定の参考事例や計画策定に関する経験談についてのインタビュー記事もご覧いただけます。なお、適応センターは、関連する研修を行うこともあります。関連するご質問などあれば、お気軽にお問い合わせください。

ゼロ・カーボン達成に向けた業務が忙しく、また組織内に専門知識を有する人材が乏しいため、適応計画の策定を行うことができません。どうしたらいいのでしょうか。

地域適応計画の策定時は必ずしも単独の計画を作る必要はありません。実際に、リンク先(https://adaptation-platform.nies.go.jp/local/plan/information/01-burden-reduction.html)で示すように温暖化対策実行計画や環境基本計画の一部として作成されているものが9割を超えています。既存の計画や施策に適応の視点を組み込むことから始めることも考えられます。上のリンクでは、計画策定時の負担軽減のポイントを確認することができます。

A-platでは専門知識を高めるためのe-ラーニングや研修動画を提供しています(https://adaptation-platform.nies.go.jp/materials/educational/index.html)。
専門知識が不足する場合には、国立環境研究所の適応センター、地域気候変動適応センター、地域の大学・研究機関、地方気象台といった外部に頼ることも有効な手段です。

地域気候変動適応計画では数値目標が設定しづらいと感じています。目標値の設定にあたり、参考となる事例を教えてください。

以下リンク先の通り既に国内の多くの地域気候変動適応計画や海外における適応関連施策について数値目標が設定されています。これらの事例をご参考ください。

また、国の気候変動適応計画においては、令和3年10月の改定時からKPIが設定されました。これらも参考にすることができます。

適応計画の策定や推進のために他部局と連携したいのですが、どのような連携方法がありますか。

他部局との連携の方法には、部署横断的な部会や組織を設置する例、勉強会・研究会等を共同で行う等によって連携を図る例、各部局に適応に類する目標や事業の提出をお願いしたり、対象とした影響調査表を作成し各部局の理解を深めてもらう例、環境省の委託事業等を共同して行うことで理解を深めたり人事交流を行う例等があります。

適応の業務は関係者が多く、調整にかなりの労力を要します。よい方法がないか教えてください。

連携が必要となる庁内の他部局については、様々な連携方法が行われています。以下のQ&Aをご覧ください。

適応計画の策定や推進のために他部局と連携したいのですが、どのような連携方法がありますか。

また、地域の住民や企業等のステークホルダーと共同して影響情報収集や適応策を実施に取り組む事例もあります。以下のQ&Aをご覧ください。

影響情報の収集や適応策の実施は、地域の住民・企業等のステークホルダーと協働して行いたいのですが、どんな手法がありますか。

適応策の推進は、国、都道府県、市区町村のどのレベルでも実施すべきものと考えますが、役割分担についてどう考えればよいでしょうか。

必ずしも明確に役割分担が定められているわけではありませんが、一つの例として以下のような分担を考えることができます。

市区町村の役割(例):
市民生活や地域社会に比較的身近な分野や市民の安心・安全に直結する分野(自主防災や熱中症対策など)での適応策の推進を担います。
市民やNPO・NGOなど地域団体が自主的に行う適応策に対する支援を行います。

都道府県やLCCACの役割(例):
市区町村がそれぞれの地域特性に応じた適応策を実施できるよう、財政、情報(県全体の気候変動予測や影響評価、適応策等の科学的知見や施策)、ノウハウの提供などを行います。特に小規模な市町村では、財政的にも人員的にも限界があり、幅広い情報の収集や新たなノウハウ獲得が難しいです。それを補う情報基盤としての機能やコンサルティング機能が求められます。
適応策には、近隣の複数の自治体が連携して実施した方が効率的なケースもあります。市区町村にまたがる適応策の立案やその実施に向けた調整役としての機能が求められます。

適応について自治体や事業者、市民の役割や取組等を規定した事例や具体的な適応策を条例に落とし込んだ事例はありますか。

複数の自治体で適応に関連する内容を定めた条例が作られています。徳島県や仙台市は条例の中で、自治体、事業者、住民等が取り組む内容等を定めています。石川県では、県が適応を推進し関連する情報を提供していくこと、県の環境総合計画の中に適応法に規定する適応計画について定める旨を記載し、三重県でも、県が適応に関する情報を提供していく旨を記載しています。また、兵庫県では、具体的な適応策(Ecosystem-based Adaptation)と捉えられる、農地による遊水機能の維持や森林の有する雨水の浸透・滞留および県土の保全機能の確保の必要性について記しています。これらの事例は他の地域で適応に関する条例を検討する際の参考とすることができます。

緩和と適応の両輪を進めていくために、特に緩和策の普及活動をされている団体と地域気候変動適応センターが連携している事例があれば教えてください。

緩和策と適応策を進めている複数の団体が一緒に環境イベント等に出展し、緩和と適応についてそれぞれ説明を行う事例があります。
地球温暖化防止活動推進員は、普及啓発について豊富な経験や知識をお持ちなのでノウハウを教えてもらいながら一緒に普及を進めていくと効果的だと考えられます。
一方、適応に関連するネットワークや関係部署との関係、具体的な対策に関する知識は緩和を進めていく上でも有効です。
緩和策と適応策を行う複数のグループが連携して、脱炭素社会そして気候にレジリエントな社会作りを進めていくとよいのではないでしょうか。

地域でEbAに取り組みたいのですが、EbAの概要や事例・参考文献等について教えてください。

EbA(Ecosystem-based adaptation)とは生態系を活用した適応であり、国連の気候枠組み条約と生物多様性条約の双方において重要視され、国際自然保護連合もガイドラインを出すなど、その重要性が広く認識されています。生態系を維持・活用することで気候変動影響の抑止・軽減を目指すものではありますが、植物を用いることで炭素固定の効果も期待ができるなど、適応以外の様々な便益(コベネフィット)も生み出せる可能性があるとされています。日本でも取組みが始まっており、Eco-DRR(Ecosystem-based disaster risk reduction)やグリーンインフラと呼ばれる取組みについても、対象が気候変動影響に関連する場合にはEbAと同様の目的を持った取組みと考えられます。環境省は、気候変動による災害リスクの高まりへの有効な対応策の一つとしてEco-DRRをあげ、国土交通省はグリーンインフラ推進戦略の中でグリーンインフラ推進の目的として適応への寄与をあげています。

国立環境研究所はEbAの研究にも力を入れており、地域での研究を検討する際にはご相談に応じることも可能です。

気候変動の影響が言及される大雨や台風によって各地で避難が必要な状況が起きています。そういった場合の避難について参考にできる情報や、政府の取組について教えてください。

近年気候変動の影響が言及される大雨や台風によって各地で避難が必要な状況が起きています。被害を防ぐため各省庁が様々な情報発信や取組みを行っています。首相官邸は、防災の手引きの中で大雨・台風でどのような災害が起こるのかを過去の具体的事例に基づき示し、そのような場合にどのように行動したらいいか、避難はいつ・どこにしたらいいか等について情報を提供しています。
気象庁は、実際の大雨等の際に防災気象情報を発表します。警報や注意情報といった防災情報とその内容に応じたとるべき行動を示しています。
国土交通省は災害から命を守るためには、身のまわりにどんな災害が起きる危険性があるのか、どこへ避難すればよいのか、事前に備えておくことが重要であるとし、防災に役立つ様々なリスク情報や全国の市町村が作成したハザードマップを、より便利により簡単に活用できるようにするため、ハザードマップポータルサイトを公開しています。
政府の発信する最新の関連情報を収集し、避難や事前の備えに活かしていくことが求められます(以上は2020年10月16日時点の各URLの内容を基に作成しました。)。

気候変動の影響により豪雨などの頻度が増える予測されています。要配慮者には独自の避難が困難な方や避難に時間を要する方もいると思われますが、どのような対策が進められているのでしょうか。

要配慮者とは、高齢者、障害者、乳幼児等の防災施策において特に配慮を要する方であり、災害発生時の避難等に特に支援を要する方は避難行動要支援者と呼ばれています。

過去に生じた大規模災害によって高齢者などの要支援者が多数犠牲になっていることが確認されています。平成28年8月台風では、要配慮者利用施設が大きな被害を受け、要配慮者利用施設における避難確保の重要性が指摘されました。
リンク:https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/pdf/e-learning.pdf

平成25年6月の災害対策基本法の一部改正により、避難行動要支援者名簿の作成を義務付けること等が規定され、それらを活用した避難行動支援が想定されています。この改正を受け、避難行動要支援者名簿の作成・活用に係る具体的手順等を盛り込んだ「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」が公表されています。また、令和4年には国土交通省が要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引きを公開しています。
リンク:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/youengosya/r3/index.html
リンク:https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/bousai-gensai-suibou02.html

地域でも取り組みが進められています。

福岡県では福岡県防災ハンドブックの要配慮者対策編において、要配慮者支援を円滑に行うための方法や個別計画の策定について、また災害発生時の避難行動について示しています。
リンク:https://www.bousai.pref.fukuoka.jp/edification/consideration
一宮川水系流域治水プロジェクトでは、要配慮者利用施設の床上浸水被害の解消を目標とした浸水対策をとりまとめています。
リンク:https://www.pref.chiba.lg.jp/cs-chousei-s/ichinomiyagawaryuuikichisuikyougikai.html

熱中症警戒アラートとはどのような取組ですか。

近年、熱中症搬送者数が著しい増加傾向にあることから、どのように情報を発信し、国民の効果的な予防行動に繋げるかが課題となっていました。このため、環境省と気象庁は、有識者による検討会を開催し、令和2年夏に、暑さ指数(WBGT)に基づき、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される場合に、新たに暑さへの「気づき」を呼びかけ国民の熱中症予防行動を効果的に促す「熱中症警戒アラート(試行)」を関東甲信地方で先行的に実施し、その検証結果等を踏まえて、令和3年4月28日(水)から全国で本格運用を開始しました。

高温注意情報を、熱中症の発生との相関が高い暑さ指数(WBGT)を用いた新たな情報に置き換え、都県内のどこかの地点で暑さ指数(WBGT)が33℃以上になると予想した場合に、前日の17時頃及び当日の朝5時頃に、都道府県単位で発表されます。また、熱中症警戒アラートが発表された場合には、以下の予防行動をとることが呼びかけられます。

  1. 外出はできるだけ控え、暑さを避けましょう
  2. 熱中症のリスクが高い方に声かけをしましょう
  3. 普段以上に「熱中症予防行動」を実践しましょう
  4. 外での運動は、原則、中止/延期をしましょう
  5. 暑さ指数(WBGT)を確認しましょう
海外の先進的な適応策の事例を知りたいです。

気候変動に関する研究や取組みをリードする欧州委員会と欧州環境機関が運営する適応に関する情報プラットフォームであるClimate ADAPTのCase Studiesのセクションにて事例が発信されています。

(2024年4月24日 最終更新)

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