「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

Prudential Regulation Authority
健全性規制機構

アンケート調査、ヒアリング調査、意見交換会等によるリスクの把握

掲載日 2017年4月14日
分野 自然災害・沿岸域 / 産業・経済活動 / 国民生活・都市生活

組織概要

英国の中央銀行であるイングランド銀行の子会社として、国内の損害・生命保険会社約500社の健全性規制に責任を持つ。

健全性規制機構

適応に関する取組の概要

保険会社へのアンケート調査、ヒアリング調査、意見交換会での議論

  • 規制の対象である損害・生命保険会社(約30社)に対し、気候変動のリスクや適応に関するアンケート調査を行った。回答を得た保険会社のうち約20社に対してヒアリング調査を行い、気候変動のリスクについて詳細な意見を収集した。研究者、信用格付け機関等にもヒアリングを行った。
    アンケート調査票(一部抜粋)

    (設問の趣旨として、i)現在と将来において気候変動が各社に及ぼす影響、ii)気候変動のリスク管理に関する取組み、iii)気候変動への適応に関し保険業界や保険規制が果たす役割、の3つを挙げている。)

    アンケート調査票(一部抜粋)
  • ケンブリッジ大学等が立ち上げた組織であるClimate Wise等が主催する意見交換会に出席し、金融業界における気候変動への対応に関する議論に参加した。
  • 上記のアンケート調査、ヒアリング調査、意見交換会の結果等により、保険業界における気候変動リスクを①フィジカルリスク、②移行リスク(低炭素社会への移行に伴うリスク)、③責任リスクに整理して報告している。

フィジカルリスク、移行リスク、責任リスク

  • フィジカルリスクには、直接的なリスク(例:嵐や洪水等の自然災害によるリスク)と間接的なリスク(例:サプライチェーンへの影響、資源不足による影響、マクロ経済・政治・社会への衝撃)がある。
  • 直接的なフィジカルリスクは、主に、損害保険会社がバランスシートの負債側(保険加入者への責任等)に影響を受ける。損害保険会社は大災害リスクモデル、投資の分散、リスク移転、短期契約といった手法により、現在レベルのフィジカルリスクには十分対応できているものの、自然災害に伴う保険金の支払い額は世界的に増加傾向にあるため、将来発生するリスクは損害保険会社に大きな影響を与える可能性があるとしている。
  • 直接的なフィジカルリスクが間接的なフィジカルリスクを引き起こすこともある。例えば、2011年にタイで発生した洪水では、グローバル製造企業のサプライチェーンへの被害といった二次的な被害を含め、120億米ドルの保険金支払いがあった。将来、間接的なリスクが増える可能性がある。
  • バランスシートの資産側に関するフィジカルリスクは、調査の初期段階ではあるものの、将来増える可能性があるとしている。不動産投資等の金融資産やポートフォリオへの影響が考えられ、長期間にわたり資産負債管理を行う必要のある生命保険会社が特に影響を受ける可能性があるとしている。
  • 移行リスク(低炭素社会への移行に伴うリスク)として、保険会社による炭素集約的な資産への投資(化石燃料の製造・使用量が制約される企業、あるいは炭素集約的な事業を行う企業への保証等)への影響や、炭素集約的な事業を行う企業から得られる保険料の減少を挙げている。
  • 責任リスクは、気候変動により被害を受けたとする人あるいはグループが、責任があるとする人あるいはグループから損失を回復しようとする結果生じる。このようなリスクは、第三者賠償責任保険に基づく請求等、損害保険会社が特に関係するとしている。アスベストや環境汚染といった過去の例では、当初はリスクが低いと思われていたことが、後に大きなリスクとなった。

今後の取組み

  • 気候変動に関する取組みとして、国際交流、調査、保険企業や専門家等との意見交換等を継続的に行い、健全性規制機構の監督業務に役立てる。また、報告書の結果を規制対象企業と共有する。
  • 再生エネルギープロジェクト関連の保険、リスク認識やリスク移転による強靭性の強化、グリーンボンド(グリーンプロジェクトの資金を調達するために発行される債券)への投資等、保険業界にとってのビジネス機会も明らかになった。