Greener Stores Frameworkを軸としたスターバックスのサスティナビリティアクション
取材日 | 2022/10/18 |
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対象 | スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 店舗開発本部 店舗設計部 コンセプトデザイングループ サスティナブルデザインチーム チームマネージャー 柳和宏 店舗開発本部 店舗建設部 ファシリティマネジメントグループ ソリューションプランニングチーム チームマネージャー 杉山容子 |
はじめにお二人のお仕事内容をお聞かせください。
柳さん:店舗設計部のサスティナブルデザインチームに所属し、環境負荷の低い店舗のための国際認証Greener Stores Framework(グリーナーストアフレームワーク)の推進を担当しております。Greener Stores Frameworkとは、スターバックスと世界自然保護基金(WWF)が共同策定したスターバックス独自の国際認証のことで、以下の8つの項目の中から基準をクリアする必要があります。CO2排出、水使用、廃棄物を減らす事を目指した環境配慮を行い、国際認証を取得した店舗のことをグリーナーストアと呼び、今後オープンをしていく店舗は基本的にグリーナーストアとして設計されています。店舗開発の際のサスティナビリティ全般を担当しているので、クロスファンクショナルな業務を担当しております。
杉山さん:店舗建設部で、店舗の工事を担当する部署に所属しています。オペレーションに合わせた動きの有効的な設計や、新しい機器の導入など、店舗を作っていくときの技術的なサポートも店舗建設部の仕事です。Greener Stores Frameworkでは、どんなアイテムを選ぶと、エネルギーや水の使用量にどんな影響があるのか、など技術的なところを担当しています。
その中の一環として、再生可能エネルギーの店舗への導入も取り組んでいます。全体から見ればまだ少ない割合ですが、現在営業している店舗の中で、路面店と呼んでいる道路から直接アプローチの出来る、ドライブスルーに代表されるような店舗については、全店舗にRE100の認証(RE100とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブがあり、世界や日本の企業が参加しています)の取れた電力の調達をしています。電力の調達にあたっては、各地域の気候や文化、歴史など、地域が大事にしているものを加味し、店舗出させていただいている立場で、地域にどんな恩返しができるのかという事を私たちは大切にしています。
Greener Stores Frameworkとは
柳さん:Greener Stores Frameworkはスターバックスの本社で作られたもので、全世界、リージョンごとに適応させていきながら、環境に配慮した店舗を認証する形になっています。以前はLEED認証(LEED認証とは、人や環境について考慮した建物(グリーンビルディング)を評価する国際認証制度のこと)を店舗の認証として採用しており、日本でも数店舗LEED認証を取得した店舗もあります。しかし、そこからスターバックスのようなリテールのスケール感で運用しやすい基準を作ることになり、SCS Global・WWFと一緒に環境に配慮した基準を作成しました。1つ1つの基準は各国それぞれの事情や法律、制度があるので、そこをアレンジし、日本でも全世界と同等の基準を整え、今後各店舗で認証を取れるよう調整しているところです。
店舗作りの場面では、トレーサビリティがない素材が使われているようなリスクがあったので、表面上見えにくいところも含めて、きちんとサスティナブルな状態にしていくためのベースラインをしっかり整備しようという意識で基準を作成しています。突飛な基準というわけではなく、1つ1つの素材について、世の中の環境基準の水準を満たしているのかチェックをした上で、店舗を作っていくということが大きな目的になっています。Greener Stores Framework自体も進化しており、5年、10年後の基準は現段階とは違う基準になりますので、一度認証を取った店舗も、何年後かの空調の更新などの設備投資のタイミングで、その時点における基準に改装していきます。常に店舗全体が環境に配慮された状態になっていくような好循環を作っていけるよう基準を整備していくことを目指していきます。
杉山さん:環境に優しいから何でもやるということではなく、カフェとして大事なことを置き去りにせず、お客様だけでなく、私たちがパートナーと呼んでいる従業員に対しても、働きやすい環境を提供する必要があると考えています。例えば省エネのために明るさを抑えることを優先しすぎると、例えばフラペチーノのクリームが綺麗に盛れたかスタッフが分からなくなってしまう状態が起きてしまいます。
世界中の地域の事情を1年かけてヒアリングしていますが、日本のものづくりの技術はとても進んでいて、環境基準を満たすたくさんの製品から選ぶことができるという面で、私たちは恵まれた環境にあると感じています。グリーナーストアとしては、そのようなものを使わせていただき、お客様にサスティナビリティと快適性を両立したエクスペリエンスを提供していくことを大事にしながら、グリーナーストアとして進化していきたいと考えています。私たちだけで頑張っても日本や環境が良くなるわけではないので、ものづくりの方達とも一緒に頑張っていけるよう推進していきたいです。
グリーナーストア日本1号店の皇居外苑 和田倉噴水公園店では、WOTAという水を循環させる手洗い器を置かせていただいています。先進的な取り組みを勉強させていただきながら、社会にどんな良いことがあるのかを考え、お店に取り入れていきたいと考えています。
柳さん:とても難しいことだと思いますが、機器を選択する際に、どのような省エネ性能があるかという観点を当たり前にしていくことが、私たちの役割だと思っています。環境配慮の取組みは、苦労して節制するイメージが世の中にありますが、例えばタンブラーを使っていただくことで、ドリンクもおいしくなり、パートナーとコミュニケーションが取れるなど、楽しい要素がありつつサスティナブルにも配慮できるという形を私たちは提案することが出来ます。簡単で楽しい体験がないと、理解はなかなか進んでいかないと思います。身近な体験から、サスティナブルにアンテナが張られ、グリーナーストアの取り組みに関心を持っていただき、環境に配慮した店舗づくりの観点が自分のお店にも取り入れられないか、などといった考え方が地域に広がっていくかもしれません。再生可能エネルギーを使うことや、廃棄物を減らすことなど、色々な意味で世の中の敷居を下げる大事な役割を担えるのではないかと考えています。
杉山さん:廃棄物については、国や地域それぞれに処理の仕方や事情が違なるので、日本では100%リサイクルされているものが、世界的に見ると普通に燃やされていることもあります。アメリカの本社から提示されたGreener Stores Frameworkを日本の風土に載せる場合、どのように無理なく溶け込ませることができるのか、1つ1つひも解いて基準に反映させていきました。
具体的にグリーナーストア国内1号店における環境配慮の工夫を教えてください。
柳さん:皇居外苑 和田倉噴水公園店にはグリーナーストア基準の認証を日本で初めて取った1号店という側面と、サスティナビリティハブ(拠点)として、日本国内における環境保護に関する先進的な数々の取り組みを実証実験していく側面の2つがあります。再生可能エネルギーも使っていますが、特にお店作りの際の廃棄物や素材の選択にフォーカスをしています。新店舗のオープンにあたり、どんな廃棄物が出るのか、どんな素材が埋め立てになるのか、焼却にはどのくらい回されるのか、マテリアルリサイクルが可能なのかということを2店舗分調査し、マテリアルリサイクルのルートがきちんとある素材を基本的に使うことをルールとしています。リサイクルが難しく解体される場合も、解体のしやすさやリサイクルしやすい状態にできるかなどの観点から物を選んでいます。今まで店舗設計部でたくさんのお店を作る立場にいましたが、店づくりの際の観点が新たに加わった感覚があります。和田倉噴水公園店をオープンさせるにあたり、検討してきた日本におけるサスティナビリティへの対応を、これからの店舗作りに反映させていくことになります。
杉山さん:これまでは、ブランドのイメージを刷新するという理由でまだ使える椅子や家具を入れ替えたり、改装をしたりしてきましたが、今後はダメになったら交換するわけではなく、使えるものはきちんと使うなど、基本的な考え方を私たちは見直しています。これから店舗を改装していく時には、極力廃棄物が少なくなるようにする、家具を替える時には捨てる家具をどう活用するのかという視点が入ってくることが大きく変わっているポイントになります。
各地域で再生可能エネルギーを調達するなかで、苦労されている点はありますか。
杉山さん:再生可能エネルギーは、各自治体でどのくらい調達ができるかというところで見ると、まだまだ発展途上な市場の中にあると感じています。日本全国一律で、RE100に則った電力の供給がある、という状態にはまだ届いていない状況です。そのため、この地域では再生可能エネルギーの調達は出来ないという地域が取り組み始めた時には全国の自治体の半分くらいありました。電力会社とお話するだけでなく、地域に直接お話をすれば、何か取り組もうとしていることが分かるかと思い、ここの地域では調達できませんと言われた地域の諸官庁の方と話をして、再生可能エネルギーの取組みについてヒアリングをかけました。日本全国で考えたら、先進的な取り組みをしていた県でも、個々の地域で見ると調達できないと言われることもありました。また、県庁の方にお話をすると、電力会社と相談して下さり、すぐに供給できる体制を作って下さったこともありました。
また、地域では再生可能エネルギーをやりたいと思っていても、使ってくれる人がどのくらいいるか分からない、バックグラウンドがないと悩まれている声を聞くこともとても多かったです。大都市圏だと土地がたくさんあるわけではないため、太陽光パネルを並べるのは難しいなど、地域によって置かれている状況は様々です。温室効果の削減という面で考えると、CO2は話題になりますが、下水の処理やごみの廃棄から発生するメタンガスの問題も大きいのではないかと考えています。大都市圏では太陽光や水力などの電気は作りづらい一方で、ダイオキシン問題の観点から、高温でごみを焼却していますので、バイオガスや焼却熱をエネルギーとして使わせていただく形はとれないか、検討をしています。
更に、リサイクルなどの環境教育を地域で行っている拠点とコミュニケーションをしていく中で、その地域に適した再生可能エネルギーの関わり方が見えてきました。例えばサッシメーカーが工場を作る場所は、水が豊かで水力発電による電力が多く取れる場所であったり、太陽光発電をしたくても積雪が多かったり、風が強かったりといった問題を抱えた地域もありますし、明治期以降から作られた発電所を丁寧に維持しながら今も使っている地域もあります。これについても、地域の事情をしっかり考えながら、適切な調達を進めたいと考えています。きちんと地域に還元できるかどうかを重点におき、この先日本が持続可能であるように、私たちも微力ながら何かお手伝いが出来ればと考えています。
エネルギー調達において意識されていることは何でしょう。
杉山さん:スターバックスには、C.A.F.E.(Coffee and Farmer Equity)プラクティスというコーヒー業界初のエシカルな調達のための購買基準となる認定プログラムがあり、そこから発想を得ました。大きなプランテーションから一気に買い付けをした方が、ビジネスとしては効率が良いですが、スターバックスは、産地それぞれの社会的責任を果たしていくことも含めて、地域が豊かになるように、小規模の農園から丁寧に栽培されている高品質なコーヒーをお客様に届けるという基本理念があります。コーヒーを倫理的なやり方で調達するのであれば、スターバックスで調達するものは倫理的であるべきだと思い、電力も同じ考え方で調達しようというヒントになりました。
個人的に旅が好きで、色々な地域に出かけたり、東日本大震災の復興に関わらせていただいたりする中で、同じ県でも地域ごとの特色は全く異なり、気候・風土・文化・歴史・人々の発想など細かく見ていくと、小さな島国でありながら多様性が非常に豊かだと感じました。地域それぞれに出店させていただく中で恩返しをするのであれば、地域ごとの特色に合わせたものを電力として調達させていただくことが選択肢になると考えております。
想定外の洪水や暑すぎる夏、強風など、御社が取り組まれる気候変動影響への対策を教えてください。
柳さん:例えば洪水の場合、浸水ハザードマップを確認するなど、リスクがあるかどうか把握した上で出店することは意識しています。特に川沿いのお店ですと、浸水する場合であれば、その時にどのような影響が出るのか、パートナーやお客様の避難の情報をどのように取るべきなのか、出店する際に検討しています。また、ドライブスルーを併設する店舗は郊外にあり、駅や公共交通機関のアクセスが遠いため、数日間はパートナーが缶詰め状態になってしまっても過ごせるよう、リスクに備え、防災備品の備蓄をしています。これらのプロセスは、印象的な変化だと感じています。
杉山さん:最近は無理してお店を開けるのをやめようという風潮になってきています。お店の事を考えて下さるパートナーがたくさんいらっしゃる中で、まずは被災者にならないで欲しいと思いますし、被災した際、お店をどう維持させるのかということを最優先にせず、個人として自分の事を大切に動いてほしいと考えています。
最近の大型台風の際も、災害リスクが高いので、お店を閉めようという話が出ていました。お客様が楽しんでいる様子が見えるよう、ガラス張りの店舗が多いのですが、安全面から見るとリスクになってしまいます。しかし、安全面を優先して全て壁で囲ってしまうと、カフェとしての楽しみが減ってしまいます。お店を開けないという判断をすることで、ガラス張りの店舗からお客様とパートナーを守ることに繋がりますので、一番いい方法が選べるような体制づくりは日々検討しています。
柳さん:お店を閉めるという判断は地域ごとの営業部が担当していますが、本部でも把握はしています。以前に比べて異常気象が増えているため、想定されるリスクを事前に把握した上で早めに対応できるようになってきました。
杉山さん:極端な話になりますが、出店した地域で誰も働く人がいなければ私たちは困ってしまいます。そこで働きたいと思ってくれるパートナー(従業員)、お店に来たいと思って下さるお客様がいて、初めてそこでお店が成立します。働きやすさや、人を大事にしていくところにしっかりフォーカスしていきながらお店作りは進めていくべきだと考えています。
柳さん:また、リペアの基準は細かく変わっています。例えばドライブスルーのオーダーボードの屋根は、今まで標準の形ですと、超大型の台風の場合、破損のリスクもありました。安全性に懸念がある状態では営業できないとして、リスクが懸念されるパーツについては、基準をアップデートし、必要に応じてリペアに設備投資をしています。
風が強い地域ではドライブスルーの商品お渡し口に囲いの設置をスタンダードにしたり、店舗の入り口に風除室を設けたり、ドライブスルー回りについては年々基準が変わっています。店舗のパートナーの意見から、ケーススタディを行い、同様のリスクが考えられるお店については補修をするなど、古いお店も直しながら、スターバックス全体で配慮がされた状態になるよう改装をしています。
店舗の空調や温度管理などで工夫されている点はありますか。
柳さん:ドライブスルーのお店の場合、夏場はお客様に来ていただく頻度が増えるので、窓を開けっぱなしにするため、外気温と同じ状態になることがあります。空調計画でなるべく風が当たるように計画はしますが、時期によって突風が吹くなど、気候変動の影響を感じる場面はあります。
杉山さん:例えば空調のエコモードを使って、時間帯で変動させる仕組みにすると、お客様の対応に忙しいスタッフがこまめに温度の調整をするのは難しいという現実があります。そのため、電力の状態を30分ずつ見ていきながら、自動で温度調整ができるプログラム化ができないか、など試しています。
柳さん:ハード面では、温度管理システムがあるので、基準値以上の温度になるとアラートが出て、店舗の温度が把握できる状態になっています。基本的には営業のエリア担当にアラートが飛びますが、本部でも管理しています。
杉山さん:お客様との空間の垣根がないので、完全に分かれているわけではありませんが、お客様とパートナーは運動量が異なるため、暑さの感度が違うことを念頭に、適切なゾーニングをすることで対応しています。お客様にドリンクを作っている行程を楽しんでいただくなど、カフェとして何を大事にしていきたいかよく話し合いを重ね、折り合いをつけながら空間計画を行います。
柳さん:設備計画の面からお話しすると、客席の空調とバーやバックルーム回りの空調は分かれています。エスプレッソマシーンなどの熱源に囲まれて働いているので暑くなるところと、客席は空調の強度を変えられるように設計されています。パートナーが立つバーと、客席とでは体感温度が全然違います。
杉山さん:暑いと思って冷房を入れると、休む時間帯に入ったパートナーが寒く感じるなど、働いているパートナーの中でも個人差はあります。エネルギー的な面から使いすぎてしまうことはしないように工夫をしなければいけないのですが、誰かがとても我慢しなければいけないという状態もなるべく出ないようにする必要があります。今後も技術革新に注目し空調メーカーと話をしながら、出来る事のプラスアルファがないか試していきたいと思っています。
既存店舗のメンテナンスはどのように考慮されていますか。
杉山さん:店舗の維持に関してはそれなりにプログラムがあります。ものを刷新していくタイミングが、単にものを捨てるのではなく、経済的劣化や社会的劣化から逆に入れ替えをした方がエネルギー効率は良くなるということも少しずつ分かってきました。グリーナーストアを既存のお店に展開していく中で、その考えは使えるという議論は始めています。
店内のランプも100%LEDに替わりました。設置当初は別のランプのサインなども使っていましたが、お客様から気付かれないうちに実は変わっています。見えないところの基準がアップデートされ、スタンダードを変えているので、一昨年オープンしたお店と最近オープンしたお店では、機器のスペックも異なります。
柳さん:省エネルギーの観点で、外壁の断熱性のスペックも変わっています。スターバックスの店舗は一般的に省エネルギー法の適用義務があるサイズではないですが、Greener Stores Frameworkに合わせて同等の基準を採用し、エネルギーに配慮した外壁計画、断熱計画の基準を整備しています。ドライブスルーの店舗では1つ1つシミュレーションをしながら、どんなスペックなら快適なのか、エネルギーの収支だけでなく客席のお客様が底冷えすることがないよう、基準を設定しています。
また、台風の被害が受けにくい店舗にする工夫も必要だと思っています。片付けやすい外部席にする、飛んでいくものを極力減らし固定するなど、1つ1つの要素を見直し、リスクの少ない状態にしておくこと、何かあってもすぐに見直して営業を再開できる店舗の基準にしていくことは大事だと思っています。この考えは、屋根の仕様変更やドライブスルーの基準の更新に繋がっています。気候変動の状況に合わせて基準を見直し、最適なものを常にキープする必要があると考えています。
杉山さん:エネルギーの面でもまだやれることはあるのではないか、日本ならではの方法があるはずだと思っています。まだ発展の途中かもしれませんが、地域循環型などの取組みに一緒に関わらせていただくなど、出来ることはあると思っています。日本で開発されている色々な環境配慮技術については、今後も勉強していきたいと思っています。
グリーナーストア国内2号店 道の駅みのりの郷東金店について
柳さん:この店舗では屋根に太陽光パネルを設置し、そこから生み出されたエネルギーを店舗の電力として一部使用するほか、災害時についても、晴天時は非常用電源として活用できます。この取組みはスターバックス単独の仕組みではなく、東金市、コーヒーの豆かすリサイクルを請け負っていただいている三友プラントサービス株式会社と3社で包括連携協定を結び、道の駅にスターバックスが出店することに対して、どのようなサスティナブルな関りが出来るか検討を重ねたものになります。太陽光パネルの設置に対しては、店舗で発電された電力を使う事は一つの目的ですが、大きい目的は災害時における地域への電力供給となります。そのため、三者で相談しながら、設置やコンセントの場所などを決めていきました。これらの経験はグリーナーストアの考え方から少し拡張している部分があると感じています。これから地方の店舗作りを進めていくときの良いヒントになる取組みだったと思っています。
杉山さん:太陽光パネルの設置については、気候が穏やかで、太陽の日照時間が長く、風があまり強くない場所として、オリーブの育つ瀬戸内のような場所が望ましいと考えていたのですが、実は東金市でもオリーブが育つことが分かり、とても驚きました。太陽光パネルは台風の影響を受けるので、多雷地域や風が強く吹きすぎてしまう土地では計画しにくいですが、その点東金市の気候は非常に向いていることが分かりました。また、浸水の影響がほとんどなく、海岸線からも遠い場所であり、発電施設を置いた時に、電力を求めて集まる方々の二次災害が起きるリスクも少ないということもわかりました。全ての店舗が太陽光をつけさえすればそれで良いという発想ではなく、きちんと地域の特性を読み解いて、実際にその選択が正しいかどうか、その方向に進むことが地域のためになるのかという点は非常に大事なポイントだと考えています。
柳さん:この店舗がオープンする前に、店舗独自の取組みや廃棄物の分別ルールなどの情報を店舗のパートナーに伝えしました。店舗設計の担当からどんな材料が使われているのかという話をしてもらい、廃棄物削減の取組み、ごみの分別ルールや捨て方、捨てたごみのリサイクル率が上がることによって、どんな効果につながるかという事を説明しています。
最後にお二人の今後の展望をお聞かせください。
杉山さん:日本は面白い色々な文化を持っていることを、様々な方と共有しながら、もっと面白いことを作る、良いひと時を作るといった幸せが実現できるよう、日々勉強していきたいと思っています。ゼロエネルギーの夢があるので、CO2や水だけでなく環境や技術面の情報が拾えるようチャネルを広げ、地域とエネルギーの問題をどう解いていけるのか考えていきたいです。私達の好きな言葉に「スターバックスのコーヒーを買うたびに、世界がより良くなるとしたら?」という言葉がありますが、そんなきっかけを作っていけたらいいなと思っています。
柳さん:私たちの強みは1店舗1店舗ごとのエンゲージメントだと思っています。地域と繋がってコミュニティコネクションの活動をするなど、地域の方に自分のお店として使っていただいていることに強みがあります。私たちが考える良いと思われることをお伝えする場として、全国にお店があり、パートナーが学び伝えていくことが出来れば、日本全国で日本が変わるきっかけになれるのでは?と考えています。店舗作りのグリーナーストアの基準だけでなく、それ以外のサスティナビリティの施策やリユーサブルなものを使っていくことなど、1つ1つを全国のお店でお伝えし、日本全体にその輪を広げていく一助になることを、私たちは目指せることではないかと考えています。そこにアプローチができるような取り組みをこれからも進めていきたいですね。
(2022年12月6日掲載)