インタビュー適応策Vol.43 ダイワロイヤルゴルフ株式会社

自然と共存共栄しながら緩和・適応に努め、安全に楽しめるゴルフ場を目指す

川田部長、勝田支配人
取材日 2023/5/23
対象 ダイワロイヤルゴルフ株式会社
本社 イノベーション推進室 担当部長 川田吉隆
三重県亀山市 タートルエースゴルフ倶楽部 支配人 勝田茂睦

御社の事業概要について教えていただけますか。

川田さん:ダイワロイヤルゴルフは自然の地形を生かした景観の美しいコースに、ゆったりとした開放感を味わえるクラブハウスを管理した、名門コースにふさわしいゴルフ場づくりを行っています。

ゴルフ場は大きく3つのブランドに分けられています。ひとつ目が「贅沢なくつろぎを特別なあなたに」というテーマで展開する“ラグジュアリー”、もうひとつが至福の時間をゆっくり楽しんでいただく“リゾート”、そしてプレーする楽しみをもっと身近に感じていただける“カジュアル”です。全国、計10か所で展開しています。

クラブハウス

まず、大和ハウスグループ全体で取り組んでいる気候変動適応策にはどのようなものがありますか?

川田さん:大和ハウスグループは、住宅・商業建築の提供と、ホテル&リゾートを中心とした事業領域でビジネスを展開しており、創業者である石橋信夫の「儲かるからではなく、世の中のためになるからやる」という指針に沿って、その時々の社会課題と向き合っています。

近年、気象災害が頻発化、激甚化し、住まいや暮らしの安全・安心が脅かされていることへの危機感から、気候変動適応についてもグループを挙げて取り組んでいます。温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」だけでなく、被害を最小限に抑える「適応」の両輪で取り組むことが重要という考え方です。

緩和に関しては、ZEHやZEB(エネルギー収支をゼロにする家・ビル)の建築、太陽光パネルの設置による再生可能エネルギーの使用などを通じて、カーボンニュートラルの実現を目指しています。また環境行動計画『エンドレスグリーンプログラム2026』を策定し、2022年度より事業活動、調達、商品サービスの各段階において、熱中症、洪水リスク回避を中心に、グループ各社それぞれの事業特性に合わせた気候変動適応計画を策定しました。

一つ目の「事業活動」では、施工現場をもつ大和ハウスならびに大和リース、フジタや、屋外売場のあるロイヤルホームセンターで、空調服など熱中症対策品の購入補助や貸与を実施しています。二つ目の「調達」では、グループ主要取引先の工場のハザードマップ調査を実施。そして三つ目の「商品・サービス」では、気象災害に備えた商品・社内基準の開発をしています。たとえば大和ハウスでは建築商品でZEB、非常用発電機や蓄電池、水防板などのBCP対策を提案するほか、大和リースでは建物の設計計画段階で水害対策を反映、コスモスイニシアではマンション建築時に浸水エリアの地盤レベルを上げる、一階住戸を作らない、止水版を設置するなどの対策を実施しています。またフジタでは、3D都市モデルを活用した浸水ハザードマップの可視化などについても研究中です。

川田さん

ゴルフ施設における熱中症リスクについて、御社ではどのような対策をとられていますか?

勝田さん:コースとコースの間には緑化部分も多いですが、そもそもゴルフ場のプレイングエリアは基本的に木が少ないです。プレーの邪魔になるからという理由や、コース全体を見渡していただくためといった景観上の問題もあるからです。加えて、芝生からむせかえるような熱気が上がってくるなど、実際の気温以上に体感温度が高いという特徴もあります。

お客さまだけでなく、CA(キャディ)やコース作業員も一日中外に出て仕事をするわけです。日陰もないところで直射日光を受けながらお客さまと一緒にコースを周ったり、草刈りやコース環境の整備をしたりしなければなりません。それらを勘案すると、お客さまも従業員も、リスクの高い環境下にあるということは間違いないと思います。

ではゴルフ場としてどのような対策をとっているかというと、まずお客さまに対しては経口補水液やネッククーラーなどの熱中症対策グッズ販売のほか、氷嚢を持参されたお客さまへの氷のサービス(セルフにて)、そして館内掲示をはじめとする啓蒙活動を行っています。しかし実際にコースに出てしまうと、プレーに熱中して水分補給がおろそかになりがちです。そこで、ゴルフカートに搭載しているカートナビゲーションでも30分に1回程度、水分補給を促すCMを放送しています。

熱中症グッズ
氷のサービス
熱中症対策チラシ

屋外作業が中心となる従業員に対しては、ファン付きの空調服を配布しています。この取り組みについては、他社のゴルフ場からも視察に来られました。興味をお持ちのゴルフ場はかなり多いと思います。

また、あってはならないことですが、万が一コース内でお客さまや従業員が体調不良を起こした場合、カートナビゲーションのボタンひとつでダイレクトにスタート室まで緊急情報が伝わり、すぐに迎えに行ける体制も整えています。

勝田支配人

それ以外にも、スマートフォンアプリ『みんなの適応 A-PLAT』を利用していただいているとお聞きしています。導入の経緯についておうかがいできますか?

川田さん:先ほど申し上げました環境行動計画『エンドレスグリーンプログラム2026』をスタートさせるにあたり、A-PLATより情報を入手していました。その流れで『みんなの適応 A-PLAT』を知り、大和ハウスグループおよび大和ハウス工業各部門において、適応策のひとつとして提案があったという流れです。私自身も2022年4月ごろにアプリの存在を知り、非常に使いやすかったことから、支配人が集まる会議でも活用を勧めました。

オンタイムで暑さ指数がわかるという便利さのほか、私が好きなのは「ココ知り」です。非常に専門的な話でもQ&A形式でわかりやすく構成されていて、小学生でも理解できるような作り方をされているところが素晴らしいです。時間があるときに開いていつも読んでいます。読めば読むほど、どんどん次が読みたくなりますね。

みんなの適応 A-PLAT+のトップページ

熱中症リスクなどのほかに、豪雨や台風、突風、竜巻などについて、ハザードマップを活用されているともお聞きしています。どのように活用されているか教えていただけますでしょうか。また、気候変動による災害が以前より増えたという実感はおありですか?

川田さん:各自治体で作成されているハザードマップを本社で一覧にまとめ、ポータルサイト内の専用セクションに格納し、集中豪雨や台風の際はすぐに確認できるようにしています。かつ、各自治体とは常にコミュニケーションをとり、連携を強化して各種情報を入手するように努めています。

勝田さん:お客さまも、以前と比べて気象災害について敏感になられているという実感があります。台風や大雨の予報が気象庁から早めに出ますので、お客さまご自身で早めにキャンセルや日程変更などの検討をして、対策を立てられているようです。

熱中症については、発症数が増えたなどの影響はありますか?

勝田さん:2022年の実績ですと、弊社全国10か所のゴルフ場で救急搬送のケースが9件ありました。タートルエースゴルフ倶楽部に限りますと1件のみで、もちろん0件が望ましいところではありますが、啓蒙や対応がうまくいっている結果ではないかと感じています。

川田さん:しかし、救急搬送まではされなくとも、熱中症予備軍は複数いらっしゃるのではないかと推察します。みなさんに楽しくプレーしていただき、また来たいと思ってもらえるよう、引き続きさまざまな形で啓蒙を続け、各種商品の販売等にも力を入れていく予定です。

ゴルフコース

気候変動が進むなか、ゴルフ場として緩和・適応に取り組むことについてのやりがいをどのようなところに感じていらっしゃいますか。

勝田さん:ゴルフは自然のなかで戦うスポーツです。ゆえに、どうしても自然と共存共栄していかなければなりません。自然環境がゴルフによって悪化すれば、業界全体のマイナスイメージにもつながります。また、熱中症が多発すれば、ゴルフは危険なスポーツと捉えられるかもしれません。やはり、地道な啓蒙活動が大切だと実感しています。

適応に取り組むのはもちろんのこと、緩和についてもゴルフカートをガソリン車から電気自動車へシフトできれば、大きなCO2削減が実現します。それを実現させようとするとコスト面のハードルが非常に高いですが、先ほど申し上げたように自然と共存共栄しながら、利益も出しつつ、少しずつ環境面へ配慮・還元できるよう努力することがやりがいにつながっています。

川田さん:カートを電動に変えた場合、充電が必要です。そこで2023年の2月から、市場価格と連動して電気料金の単価が変動する市場連動型プランに契約を切り替えました。JPEX(一般社団法人 日本卸電力取引所)および、取引先さまからの情報を精査し、独自のデータを毎日全事業所に共有しています。そこから各事業所の支配人が、充電などの予定を組むわけです。一例として、電動ゴルフカートを導入している事業所ではタイマー式を採用し、最高値時の充電を控える施策が整いつつあります。

施設稼働費のエネルギー消費を、いかにおさえるか。それを意識して緩和につなげていくとともに、現場では適応に取り組み、緩和と適応の両輪で進めていくことにやりがいを感じています。夏場でもどんどんお客さまに来ていただけるゴルフ場を目指したいです。

この記事は2023年5月23日の取材に基づいています。
(2023年6月20日掲載)

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