インタビュー地域気候変動適応センターVol.10 鳥取県

鳥取県気候変動適応センター

鳥取県の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。

1)鳥取県の地域特性

鳥取県は、日本列島本島の西端に位置する中国地方の北東部に位置し、東西約120km、南北約20~50kmと、東西にやや細長い県です(面積:3,507km2、人口:約55万人、世帯数:約22万世帯)。北は日本海に面し、鳥取砂丘をはじめとする白砂青松の海岸線が続き、南には、中国地方の最高峰・大山をはじめ、中国山地の山々が連なっています。山地の多い地形ながら、三つの河川の流域に平野が形成され、それぞれ鳥取市、倉吉市、米子市が流域の中心都市として発達しています。

鳥取県の地図

気候は比較的温暖で、春から秋は好天が多く冬には降雪もある等、四季の移り変わりは鮮やかです。また、台風などの自然災害が比較的少なく、気候条件に恵まれています。しかし、気候変動の影響に伴って、強い台風の接近回数や短時間強雨の発生頻度の増加等による自然災害発生の増加や、逆に無降水日の増加による渇水リスク増加等が懸念されます。

行政ブロックでは中国地方に入っていますが、経済的には大阪を中心とする近畿経済圏に属しており、人的往来、物資の移出入等京阪神地方との結び付きが強くなっています。経済構造を見ると、平成30年度県内総生産は、1兆9,080億円で、産業別の構成では、第1次産業が2.8%、第2次産業が21.6%、第3次産業が74.8%※1となっています。

※1:輸入品に課される税・関税を含んでいるため、構成比の総計は100%に満たない。

青く澄み渡る日本海、緑豊かな山々と、豊かな自然に囲まれており、こうした環境の中で、二十世紀梨やスイカをはじめとする数々の農産物が生産され、ズワイガニ、イワガキ、ハタハタ等の新鮮な海の幸が水揚げされています。

出典:鳥取県HP「鳥取県のプロフィール」、「鳥取県農林水産業の概要(令和3年版)」

2)気候変動適応センター設置の経緯等

近年、気温上昇や大雨の頻度の増加、農作物の品質低下や動植物の分布域の変化、熱中症リスクの増加など、気候変動に伴う影響が様々な地域で顕在化しており、地球温暖化の進行に伴って、猛暑や豪雨のリスクは更に高まっていくと予測されており、鳥取地方気象台における1943年~2017年の観測結果によると、年平均気温が長期的なトレンドとして100年あたり1.8℃の上昇傾向にあることが示されています。

気候変動の影響は多岐の分野にわたり、鳥取県では既に様々な適応策を実施していますが、今後も関係部局が気候変動に関する情報を共有して、社会的・経済的な被害や損失を最小限に抑えるとともに、気候の変化を地域の新たな発展に繋げていくことを目指した取組を推進することとし、2020年3月に、地域気候変動適応計画も包含する「令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン」を策定しました。

本プランでは、鳥取の健全で恵み豊かな環境を持続可能なものとし、暮らし・地域・経済の取組の相互作用によって持続的に発展可能な仕組みを目指すことを目標としており、気候変動適応に係る取組として「気候変動に伴う影響やリスクを前提として積極的に対応する施策の推進」を掲げており、「地域気候変動適応センター」を設置し、気候変動に関する様々な情報収集や県民・事業者等への普及啓発等に取り組んでいくことを謳っています(※1)。

これを受け、気候変動に対応した様々な適応策を実施するとともに、気候変動に関する様々な情報収集や県民・事業者等への普及啓発・情報発信等を行う拠点として、鳥取県気候変動適応センターを設置することとし、国の関連事業のスキームの中で関連する調査研究を行うことも目指して、鳥取県衛生環境研究所内に設置することとなりました(組織としての設置ではなく、鳥取県気候変動適応センターと位置付けて関係業務を分掌)。

*1:令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン"のリンクページに掲載されている「令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン(全体版)」のp51~55参照

3)組織体制

「鳥取県気候変動適応センター」は、鳥取県の組織として別に設置したものではなく、設置要綱を定めて、鳥取県衛生環境研究所内に設置したもので、専任の職員はいません。

鳥取県内の気候変動の影響や適応策に係る情報収集や普及啓発・情報発信とともに、水環境への影響に着目した調査研究を行う計画で、水環境の研究担当室や企画調整担当の者が業務として「担当」する予定です。将来的には、「鳥取県地球温暖化防止活動推進センター」※2と統合することも視野に入れています。

  • 鳥取県気候変動適応センター事務局長 ⇒鳥取県衛生環境研究所長
  • 鳥取県内の気候変動の影響や適応策に係る情報収集・発信、普及啓発等⇒次長、企画調整担当、脱炭素社会推進課
  • 水環境への影響に着目した調査研究 ⇒水環境対策チーム
※2:地球温暖化対策の推進に関する法律第24条第1項の規定による地球温暖化対策を推進する拠点として、鳥取県が「NPO 法人ECO フューチャーとっとり(公立鳥取環境大学内に事務局が所在)」を指定したもの。

地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることがあれば教えてください。

鳥取県気候変動適応センターは今年4月に設置したところで、まだ本格的に動いていませんが、以下のとおり、現在顕在化しつつあると言われている気候変動による鳥取県内への影響に関する情報・データの収集・分析や、関連する調査研究に取り組み、得られた情報・知見を発信して県民や事業者等への普及啓発に取り組みます。

1)県内の気候変動に伴う影響に関する情報収集

  • 県民や事業者等の皆様や関係機関と連携し、気候変動に関する様々な情報の収集や普及啓発等に取り組みます。
  • 日々の活動の中で気候変動影響を実感する機会が多いと考えられる、農業や漁業等に従事する方々からの情報収集
  • その他県民からの情報収集

2)気候変動に伴う鳥取県内の水環境・水循環への影響の調査研究の取組

鳥取県の豊かな水環境・水循環、及びこれらがもたらす恵みに注目し、気候変動による影響を評価するための以下の調査研究に取り組むことを検討中です。

鳥取県の豊かな水環境や水循環について、以下のことを把握するとともに、気候変動による影響を予測・評価します。

➀降水→陸域→海の流れや水循環
➁➀が豊かな水環境や沿岸海域の漁場を形成する機構

3)国や近隣自治体との連携

国や近隣自治体等と連携し、地域の関係者の連携が必要な適応課題について検討します。気候変動適応中国四国広域協議会への参加

中国四国広域協議会が設けた分科会のうち、次の分科会に参加します。

  • 山林の植生・シカ等の生態系分科会
  • 瀬戸内海・日本海の地域産業分科会

4)情報・知見の発信と普及啓発

(1)~(3)の活動を通じて得られる情報や知見を発信して普及啓発等に取り組みます。

庁内関係部局との連携や県、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。

気候変動による本県への影響について、手始めに、日々の活動の中で気候変動影響を実感する機会が多いと考えられる農業・漁業従事者や関係者と連携して情報収集・発信しようと考えていることから、庁内の農林水産部局の協力も得て、情報収集を、以下のような方法で進めていくことを検討しています。

  • 農業従事者からの情報収集 ⇒指導農業士※を通じてアンケート+ヒアリング
    ※指導農業士:市町村の推薦により鳥取県が認定。県内に70人程度在籍。地域リーダーとして地域農業振興のために様々な活動を行っている。・・・新規就農者の育成、農村青年会議等の活動に対する指導・援助、農業改良普及事業への協力、市町村及び県の農林行政への提言と地域農業振興への協力等
  • 漁業従事者からの情報収集 ⇒鳥取県漁協を通じてアンケート+ヒアリング
    ⇒その後の発信や普及啓発、適応策の検討の際にも、ここで出来た繋がり・ネットワークを活用することを考えています。

併せて、鳥取県気候変動適応センターの設置前の「令和新時代とっとり環境イニシアティブプラン」策定の際に収集された情報を参考とします。

本県が参加する「気候変動中国四国広域協議会」が設けた分科会の「瀬戸内海・日本海の地域産業分科会」に係るヒアリング等についても、庁内水産部局の行政機関及び試験研究機関(水産課、水産試験場、栽培漁業センター)とで共同参加して情報共有・連携していく予定です。

現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。

鳥取県気候変動適応センターの活動を通じて、気候変動による鳥取県内への影響を身近な問題として関心を持ってもらうとともに、鳥取県が豊かな環境にあることやその価値を再認識していただくことを目指しています。
このように県民の関心が高まって意識醸成が進むことより、気候変動影響への適応策や抑制策の推進に繋がるとともに、情報収集や調査研究で得られた知見によって適応策の新たな手段が生まれることも期待して取り組みたいと考えています。

この記事は2021年9月22日の書面による回答に基づいて書いています。
(2022年1月14日掲載)

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