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インタビュー地域気候変動適応センターVol.9 江戸川区

東京都内初の地域気候変動適応センターが誕生

取材日 2021/6/25
設置機関 江戸川区環境部気候変動適応課
対象 江戸川区 副区長 新村義彦
江戸川区 環境部 部長 髙原伸文
江戸川区 環境部 気候変動適応課 課長 佐藤弥栄
江戸川区 環境部 気候変動適応課 気候変動適応係 係長 久保智

江戸川区の地域特性について教えてください。

新村さん:江戸川区は荒川と江戸川の河口のまちで、非常に平坦な地勢です。大正から昭和初期にかけて、地下水を汲み上げていた関係で本来の地盤より2〜3メートル沈下が進み、海面よりも地面が低いという問題を抱えています。30〜40年前はちょっと雨が降るたびに水浸しになるような状況でした。
戦後に都市化が進み、江戸川区誕生時の約10万人から現在は70万人まで人口が増えました。平成の時代に入り、ほぼ100%下水道を完備しました。それによって、ちょっとした雨で水が上がるということもなくなりましたが、下水道整備の基準となる降水量は1時間50ミリです。地球温暖化が原因と思われる異常気象で、降水量がいままでとは比べものにならなくなり、大河川の氾濫も大きな課題になってきました。数年前はこのあたりでも、90ミリ程度降っています。堤防の強化を図り、貯水池もかなり作りましたが、なかなか追いつかない状況です。
そこで根本的な原因である地球温暖化に最大限取り組もうということで、平成20年に「エコタウンえどがわ推進計画」を策定しました。温暖化の弊害について区民と共有するとともに、年次目標を定めて低炭素化に向けた取り組みを進め、10年以上が経ったところです。
目標値は一次計画、二次計画で定めたものについては概ねクリアしているのですが、区の取り組みがどのくらい環境に寄与しているかについても検証しようとしています。その流れで組織を立ち上げ、気候変動適応本部を作りました。世界の潮流もありますが、江戸川区は低地にあるので、なおさら自分ごととして地球温暖化に取り組みたいという思いがきっかけになっています。

江戸川区役所正面玄関横にある荒川の水位計

そこから地域気候変動適応センターを区に設けられた目的は何だったのでしょうか。

高原さん:気候変動には緩和策と適応策がありますが、緩和策については計画的に進めてまいりました。適応策については、防災を意識した治水対策などを中心に進めています。これは担当部署で進めてきたのですが、もう一歩前へ、ということで、昨年度からはさらにSDGsも意識した取り組みを進めようとしているところです。
気候変動適応法が制定されて、都道府県レベルでセンターの設置が見られるようになっていますが、市区町村ではまだ数例です。江戸川区としては、水害など気候変動の影響を受けやすい地域として、さらに対策を前進させていくという気持ちのもと2021年4月にセンターの立ち上げに至りました。
ただ、私たちのような特別区のレベルですと、専門的な研究機関のノウハウを持っておりません。そこは国立環境研究所や、東京都の環境科学研究所から専門的な助言をいただきながら情報を分析して対策を取りまとめ、区民や事業者が一丸となって気候変動や脱炭素への取り組みを進めていこうと考えています。

新村さん:今年4月1日に江戸川区気候変動適応センターを設置し、6月19日には1回目の気候変動適応本部会議を行いました。健康部や、福祉部といった通常あまり気候変動と関わりのない各部にも適応策・緩和策について話をすると「他人事じゃない」と理解してくれたように思います。自分にできることはなんだろう、ということで、全体が一丸となってやろうという雰囲気になっているのはありがたいですね。

高原さん:江戸川区には町工場が多いので、たとえば地場産業を低炭素型の産業構造にしていくなど、取り組むべきことは多いです。掘り起こせばこれからも出てくると思いますし、既に各部が取り組んでいることもあり、それぞれしっかりと方向性が定まっており使命感を持っていると思います。そのため庁内横断的なコミュニケーションは非常に取りやすいですね。

組織を立ち上げようと検討を始めたのが2020年の12月。スピード感を持って設置できた理由は何だったのでしょうか。

高原さん:先に地域気候変動適応計画を策定し、後で地域気候変動適応センターを設置するという段階を踏んで進めていくというのも方法のひとつだとは思いますが、江戸川区についてはバックキャスティングの発想で、最初に適応センターを作り、今は全庁を挙げて計画を練っているところです。そのほうがアグレッシブに物事が進むだろう、という考え方です。

新村さん:環境部を作ったのは、昭和45年と23区のなかで江戸川区は相当早かったんですね。当時の環境部の所管はドブさらいやハエ・蚊対策だったのですが、ドブがなくなりハエや蚊が減ると、今度は所管が大気や騒音などに移行しました。その後、排気ガスの規制などが進みました。また当初より区内にひとり10本の木を植えようという緑化運動に取り組んでいますが、環境に対するターゲットが時代とともにシフトしていったという経緯があります。そしていま、地球温暖化対策に力を入れている、という流れです。
エコタウンえどがわ推進計画があったことも大きいと思います。NPO法人えどがわエコセンターが平成16年にできたのですが、ここには区の職員も配置されている、いわゆるエコ活動に興味のあるボランティアの集合体です。野鳥が好きな人、ゴーヤを植えて日陰を作る人、河川敷で自然池を作る人、とさまざまで、区民と一緒にエコタウンえどがわの取り組みを進めていきました。
そのような背景がありますので、急に思い立って作ったわけではありません。昨年スタートしたSDGs推進本部では、2030年目標を令和3年度中に作ろうと計画しています。環境・経済・社会のなかの「環境」要素なので、この機会に一緒にエコタウンえどがわ推進計画をバージョンアップさせよう、という思いです。

これまで温室効果ガス削減など、緩和メインで取り組まれてきたかと思いますが、そこに適応が入ってくることで、両輪とはいえ、みなさんはどのようにバランスを取りながら運営されているのでしょうか。

高原さん:先ほどまで緩和の話をさせていただきましたが、適応策も同時に行なってきました。江戸川区ではたとえば土木や災害対策、そして衛生健康分野では感染症対策や熱中症対策にも力を入れてきたつもりです。今回の適応センター設置は、それまで取り組んできた適応策を再点検・再認識して、よりよいまちづくりに活かしていくきっかけになっていると思います。

新村さん:高潮対策や洪水対策、住宅密集地の解消による地震対策などは、地球温暖化が叫ばれる前から継続して行なってきました。現区長も前区長も「まちづくりは防災対策」と明言しており、これらの取り組みは昨日今日始めたことではありません。もちろん降水量が増えているので、堤防の高さの見直しなどは必要ですが、いままでやってきた仕事に「適応策」という名前がついただけのことですので違和感はないですね。

住民の方々への普及についてお聞かせください。

佐藤さん:ホームページの えどがわ区民ニュースにて、気候変動について取り上げた番組を放送しています。気候変動とは何か?という基本的なところから、海外や国内の情報にもアクセスできるようさらにコンテンツを充実させていきたいと思っています。まだ始めたばかりですが、区民の皆様にも自分ごととして気候変動を捉えていただけるようなわかりやすい内容にしたいです。

東京都との連携についてお聞かせください。

高原さん:環境科学研究所と都庁の環境局に、江戸川区として気候変動適応センターを設置し適応策推進に取り組んでいく方針をお話しさせていただきました。専門的な知見が不足している部分については、助言していただけるというお話しをいただき、ありがたいと思っています。
先日は有識者にお集まりいただき、江戸川区の気候変動適応計画策定などの考え方や進捗状況をお話しし、内容についてのアドバイスもいただきました。国立環境研究所とも、情報交換や連携を密にしながら進めていけたらと思っております。

今後の予定も含めて、江戸川区としてPRしていきたいことがあれば教えてください。

佐藤さん:いま進めている第二次エコタウンえどがわ推進計画は、2018年から2030年までの計画なのですが、国の目標でも2030年に温室効果ガス削減量を-46%にという数字を掲げています。江戸川区の削減目標は-40%で、これまでも高い数字でしたが、それをもっと上げていこうという流れになるかと思います。適応策と緩和策を併せて、区民の一人ひとりが自分ごととして捉えられるような計画を作っていきたいですね。

最後に、皆さんのやりがいや今後の抱負についてお聞かせください。

久保さん:気候変動についてはまだ勉強しなくてはいけないことがたくさんありますが、夏の気温は高いですし、冬も年々あたたかくなっているように肌で感じています。こちらに配属されたのも、ひとつのご縁。今後も長く付き合わなければならない課題だと思いますので、ここをスタートとして長い目で取り組んでいけたらと思います。

佐藤さん:気候変動は世界的な問題です。私にも子どもがおりますので、このまま何もしなければ子どもの代まで気候変動の危機が残ってしまうというのは大変なことです。そのような視点も取り入れて対応していきたいです。

高原さん:いま私は、環境部長という職を与えていただいています。区長から「新しい組織体制を作って気候変動問題に取り組んでいこう」というお話を昨年末もらってから、準備を始めて数ヶ月。形になっていくのはまだ先かもしれませんが、関係者で力を合わせて使命感を持って気候変動対策に取り組んでいかなければいけないと思っています。
地域住民のみなさんにも気候変動の脅威をご理解いただいたうえで、一緒に行動・実践してもらえるような下地作りを地道に続けていきたいです。

新村さん:地球規模の課題である気候変動対策について、各国がそれぞれ目標を定め、さまざまな手法でその国なりに脱炭素に取り組んでいます。日本も日本なりのやり方を、これから見定めていくでしょう。そのなかで、江戸川区に何ができるのか。何をすれば効果的に脱炭素に取り組めるのかということを、今回の計画のなかで見極めなければならないと思っています。
区役所内にもさまざまな部署がありますから、私はそれをきちんと束ねていくという使命があります。みんなでスクラムを組んで計画作りを行うことがまずスタートです。同時に70万人の区民、事業者の皆様に気候変動について知っていただいて、意識を変えてもらうために今後も試行錯誤していきます。

この記事は2021年6月25日の取材に基づいて書いています。
(2020年11月11日掲載)

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