インタビュー地域気候変動適応センターVol.11 山形県

山形県気候変動適応センター

山形県の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。

山形県は、村山、置賜、最上、庄内の4地域に分けられ、それぞれの地域が盆地、山間部、沿岸部と、地形的な特徴が異なり、気象や気候の特徴が異なります。そのため、地域の方々の気候変動に対する捉え方も様々であると考えられ、地域に合った適応策を進めていくことが重要であると考えています。

山形県では、令和3年3月に第4次環境計画を策定し、計画には種々の環境に関する計画を包括的に盛り込み、気候変動適応法第12条に規定する気候変動適応計画、同法第13条に規定する地域気候変動適応センターの設置についても規定し、山形県気候変動適応センターが令和3年4月1日に開所しました。

これまで県環境科学研究センターでは、地球温暖化対策を含めて様々な環境教育を主体的に行ってきたこと、環境に関連する図書の貸し出しなどを通して情報発信を担ってきたことなどから、検討を重ねた結果、山形県気候変動適応センターを当センター内に設置することに決定しました。

組織体制としては、環境教育などの業務を行っている「環境企画部」が適応センターの運営業務を担い、所長はじめ、副所長2名、環境企画部員4名の体制となっています。

山形県の地図

地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることがあれば教えてください。

適応センターの最大の目的は、気候変動適応に関する情報の収集と発信ですが、進めるにあたって次の2つが重要であると考えています。一つは、数多くの分野における基本的な事柄から専門的かつ高度な知見まで幅広く収集し、それをわかりやすい形に変えて県民に広く発信していくこと、また、県民が求める情報を容易に取得できるような情報の整理を行うこと。もう一つは、地域ごとに、その地域の特性に応じた地域レベルでの適応の取組を進められるよう、情報の発信を通して、助言、サポートしていくことです。

一つ目については、現在、情報収集を積極的に行うと同時に、日々改善しながら環境教室、出前講座を通して県民への情報提供を進めているところで、これまで10件程度行い、今後さらに件数の増加を目指しています。

もう一つの、地域レベルでの活動の促進については、大変難しい課題ではありますが、スタートとして、12月に、ワークショップ形式でのセミナーを開催したところです。講演会形式でのセミナーは一方通行になりがちで、県民の生の声が聞こえないことからワークショップ形式にし、参加者からは、想定以上に、普段感じていることなどの意見を数多く出していただきました。この中から、地域レベルで適応策を進めるために行政に求められていることを見出し、今後の展開につなげていくことを考えています。

また、現在参加している気候変動適応東北広域協議会の事業である生物季節モニタリングを継続し、データを蓄積、発信していきますが、前述のとおり山形県は地域ごとの気象・気候の特性が大きく異なることから、多くの県民にモニタリングに参加していただき、自分の周りで生じている気候変動を実感していただくことで、県民一人ひとりの適応への取組を促進していきたいと考えています。

庁内関係部局との連携や県、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。

気候変動への適応、特に防災に関することは、地域レベルで取組を進めることが重要だと思われますが、そのためには市町村が積極的に関わる必要があります。

県は、地域気候変動適応センターとして、情報を発信することに加え、地域の団体がそれぞれの地域の取組を進められるように、市町村に対して助言、サポートをしていくことが重要と考えています。

現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。

気候変動に関する調査研究は一般に対象が広域的になるため、県レベルで取り組むべき研究課題は少ないと思います。地域気候変動適応センターに求められていることは、地域レベルでの取組の促進であり、県民に向けて、広く、「緩和」と「適応」という概念を広め、浸透させていくことが重要と考えます。これまでの環境教育の取組を活用し、さらに発展させて普及していくためには、どのような方法がよいか、考えていく必要があります。

調査研究とは異なり、「適応」と「緩和」をいかに周知して浸透させていくか、他自治体やA-PLATでの情報なども参考にしながら取り組んでいきたいと思います。

この記事は2021年12月20日の書面による回答に基づいて書いています。
(2022年2月4日掲載)

ページトップへ