インタビュー地域気候変動適応センターVol.13 神奈川県

神奈川県気候変動適応センター

神奈川県の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。

神奈川県は、全国の都道府県の中では狭い県土面積ながら、多様な自然的・社会的環境を有しており、沿岸部や山間部、都市部や農村部など、その地域ごとに、気候変動の影響の現れ方が異なると考えられます。

本県の地方環境研究所である「神奈川県環境科学センター」では、環境問題の解決に向けた施策等への活用に結びつく調査研究などを行っており、気候変動適応法が規定する情報の収集・分析などの機能を担うことができると考えられたことから、平成31(2019)年4月、同センターを気候変動適応法に基づく地域気候変動適応センター(以下「センター」という。)として位置付けました。

体制は、兼務を含めて5名です。センター長を環境科学センター所長、テクニカルマネージャーを同センター環境情報部環境活動推進課長が務め、同課の職員3名(うち2名は兼務)が配属されています。

神奈川県の地図

地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることがあれば教えてください。

情報収集・整理としては、県内における気候変動やその影響、適応策に関する情報の収集のほか、夏季に暑さ指数や気温の観測を行い、県内の暑熱の状況やヒートアイランド現象の実態把握を行っています。

分析・影響予測としては、暑さ指数と熱中症救急搬送者数のデータを用いて、県内の熱中症リスクに関する分析を行っています。また、県内各地域の気候変動による影響について、潜在的なニーズや課題を明らかにするため、地域の関係者(ステークホルダー)へのヒアリング等による調査を行っています。

情報発信としては、気候変動問題に関する若年層の関心や理解を深めるため、気候変動に関する学習用教材を作成しています。この教材は学校の授業で活用していただくことを想定して作成していますが、「かながわ気候変動WEB」(https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0323/climate_change/index.html)で公開しており、どなたでも自由にご利用いただけます。また、県民の皆様への普及啓発として、暑熱に関する県民参加型調査「かながわ暑さ調べ」を行っています。この事業は、暑さ指数について正しく知っていただくとともに、気候変動を「自分事」として捉えるきっかけ作りを目的として、希望する県民の皆様に暑さ指数計を貸し出して暑さ指数を一斉に測定していただくものです。令和3年度は100名の方々に測定に参加していただきました。

庁内関係部局との連携や県、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。

庁内の連携については、気候変動の適応に関する関係課で構成する部会があり、定期的に情報共有などを行っています。各部署で気候変動影響や適応に関する取組が動き出している中で、地域気候変動適応センターがどのように関わり、役割を果たしていくかということが課題のひとつと捉えています。それぞれの担当者と積極的に情報交換等を行うことでセンターへのニーズを把握し、今後の取組に繋げていきたいと考えています。

また、県内の市町村や事業者への適応の取組の支援もセンターの重要な役割のひとつと捉えています。このことについても、庁内と同様にニーズの把握を進め、必要な情報の発信等を行っていきたいと考えています。

現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。

気候変動は将来の長い期間、幅広い分野に影響を及ぼす深刻な問題です。その意味で、センターは重要な役割を担っていると考えています。

ヒアリング調査等を行っていますと、多くの方々が気温の上昇や雨の降り方の変化などを身近に感じています。しかし、そのような気候変動が将来身近なところにどのような影響を及ぼし、どのような対策が必要なのかをイメージすることはまだ難しいようです。今後も様々な関係者や関係機関と緊密な連携・協働を図りつつ、多くの方々が気候変動を「自分事」として捉え、適応策の推進に貢献できるような情報発信に努めていきたいと考えています。

この記事は2021年12月9日の書面による回答に基づいて書いています。
(2022年2月8日掲載)

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