インタビュー地域気候変動適応センターVol.14 川崎市

川崎市気候変動適応センター

川崎市の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。

川崎市は、多摩川に沿って南北に細長く立地し、南部は海に接し、多くの工場・事業場が集積した工業地帯であり、北部は多摩丘陵や生田緑地などの豊かな緑に囲まれていて、南北で都市化の状況が大きく異なります。

地方環境研究所である「川崎市環境総合研究所」では、気候変動適応センターを設置する以前から都市化によるヒートアイランド現象に関する調査研究や熱中症救急搬送状況のデータ解析など暑熱に関する調査研究を行っておりました。また、気候変動適応法が施行される前から、市としても適応方針や地球温暖化対策に関する計画に適応策の推進を掲げるなど適応策の取組を進めてきました。こうした中で、気候変動適応法の可決を契機として、検討を開始し、令和2年4月1日に、気候変動適応法第13条に定める適応センターとして政令市初の「川崎市気候変動情報センター」を設置しました。

組織体制としては、ヒートアイランドや暑熱環境など、気候変動に係る調査研究を従前から行っていた「環境総合研究所」に適応センターの機能を確保し、現在は、センター長を環境総合研究所所長、副センター長を都市環境担当課長にそれぞれ割り当て、センター職員として課長補佐1名、職員2名の計5名の体制でセンターの運営を行っています。

川崎市の地図

地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることがあれば教えてください。

地域適応センターの活動としては、大きく分けて情報収集と発信の2つがあると理解しています。

情報収集としては、市内の気温や降水量などのデータ解析による市内の気象に関する実態調査、熱中症救急搬送状況のデータ解析、測定機器を使用した屋内外での暑熱環境調査及び市民・事業者・庁内職員に対してのアンケート調査など、研究所に確保したセンターのメリットを活かして、様々な調査研究による情報収集を行っています。併せて、国主催のセミナー、シンポジウム等への参加や国及び地方の適応センターとの意見交換を通して情報収集を行っています。

また、情報発信としては、市民向けセミナー等やホームページ、Twitterによる適応策の発信などを行っております。特にTwitterでは、分かりやすさを意識しながらこまめな発信を心掛けるなどにより、センター設置当初は、フォロワー数が約450であったのが、令和3年12月時点で約800まで伸びており、適応策の情報発信に効果があったと感じております。

加えて、今年度は、環境省の「令和3年度地方公共団体の効果的な熱中症予防対策推進に係るモデル事業」に応募し、採択自治体として、町内会会議やイベントの機会を捉えた高齢者に特化した熱中症予防啓発や住環境における暑熱環境モニタリング、川崎市域の熱中症の将来的なリスク分析など、予防啓発から調査研究まで複数の取組を行い、知見の収集や効果的な熱中症予防啓発など多くの成果を得ることができました。令和4年度以降も庁内関係部局と連携を図り、適応策を更に推進していきます。

庁内関係部局との連携や市、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。

川崎市では、庁内における気候変動への適応策の推進について協議検討を行う場として「気候変動適応WG」を設置しており、本WGを通じて、庁内関係部局と連携しています。今年度は年度当初にWGを開催し、環境省の熱中症予防モデル事業の計画を説明したところ、多くの関係部局から御協力頂けて、熱中症予防啓発が、市役所全体の取組へと発展しました。適応策の推進には、直接説明できる機会を頂くことが必要ですので、関係部局の協力を頂き、イベント、町内会会議等において、説明の場を広げているところです。

一方、事業者の適応策推進については、課題があります。川崎市は産業都市であるため、事業者の適応策推進の必要性は十分にあると考えられますが、事業者の目線では、適応策は、熱中症、感染症、治水・水害など多岐に渡るため、何をどう取り組んでいけばいいのか分からないという意見もあり、適応策推進に効果的なアプローチ方法等を模索しております。このような課題の解決に向けて、国立環境研究所様や各地域適応センター様とも引き続き情報共有、意見交換を密に交わしていきたいと思っております。

現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。

気候変動は世界的な問題であり、今後、気候変動や適応策に係る情報はその重要性を増していくと思います。また、気候変動適応は幅広い分野に及ぶため、環境部局だけでなく市民、事業者、庁内関係部局が一体となって取り組む必要があります。そのため、社会的に重要な気候変動影響という課題に対して、調査研究で新たな知見を得るとともに創意工夫を凝らした情報発信により適応策の普及を促進していく意義は大きいと思います。センターの活動を通して、調査研究による科学的根拠を元に市民にわかりやすく、適応策への行動変容に繋げていく情報発信が重要であると感じており、気候変動による影響は差し迫っておりますので、スピード感を持って地域適応センターの活動を行いたいと思います。

この記事は2022年1月6日の書面による回答に基づいて書いています。
(2022年2月28日掲載)

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