インタビュー地域気候変動適応センターVol.15 新潟県

新潟県気候変動適応センター

新潟県の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。

1)新潟県の地域特性

新潟県は本州日本海側の気象を代表する県の1つです。特に山間部は世界でも有数の豪雪地帯として知られており、除雪に伴う事故や交通障害、雪崩など、雪による災害に悩まされる一方、スキーや各地の雪まつりなど、雪は貴重な観光資源になっています。また、雪冷熱を利用した冷房や貯蔵など、「利雪」の取組もあります。

フェーンによる高温も日本海側の気象の特徴のひとつです。気象庁の観測による最高気温の全国ランキングには、40℃を超えた新潟県の地点が多く載っていますが、すべてフェーンの影響を受けたものです。

地形的には、周囲を急峻な山岳地で囲まれ、これらの山岳に源を発する数多くの河川のほか、信濃川や阿賀野川など長大な河川が日本海に注ぎ、越後平野、高田平野など広大で肥沃な農業地帯を形成しています。また、県土を貫く形でフォッサマグナと呼ばれる地質構造が形成されており、地すべり地帯を多く抱えています。このため、たびたび豪雨による災害が発生し、それらの対応が重要になっています。

農業は新潟県の重要な基幹産業であり、コシヒカリを代表とした水稲の一大産地として知られています。また、西洋梨(ルレクチエ)やチューリップなど、果物や花きの生産も盛んです。

商業圏としては、関東地方との結びつきが強くなっています。

2)気候変動適応センター設置の経緯

新潟県気候変動適応センターは、地域における気候変動影響及び気候変動適応に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに技術的助言を行う拠点として、平成31年4月、新潟県保健環境科学研究所に設置されました。当研究所にセンターを設置した理由は、①国では、国立環境研究所を中核として地域センターと連携して調査研究することとしており、国立環境研究所とパイプのある当研究所がふさわしい、②当研究所では、当県の温室効果ガス排出量の算定業務を行っており、これらのデータの集積・分析のノウハウが活かされる、という考えに基づきます。

3)組織体制

新潟県保健環境科学研究所で地域気候変動に関する事項を分掌するものとしており、職員3名が新潟県気候変動適応センターの業務を兼務で担当しています。

新潟県気候変動適応センターの写真

地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることがあれば教えてください。

新潟県では、令和元年から2年にかけ、各分野専門家等からなる「新潟県気候変動適応に関する研究会」を設置し、最新の知見による当県の気候変動の現状、将来予測、影響並びに対応方針等について調査・研究を行い、この研究会から提出された提言書を踏まえ、新潟県気候変動適応計画を3年3月に策定しました。当センターは事務局の一員として参画しており、研究会の活動で収集した知見を順次更新しながら、県民の皆様へ情報提供しています。

計画では、新潟県で最も重要度が高い項目として、水稲(主食用米)、水害(洪水・内水)、雪害、暑熱(熱中症等)の4つをあげていますが、これらは気候や地形、産業など、新潟県の地域特性を反映した結果といえます。こうした地域特性を踏まえ、今後も気候変動の将来予測や適応策を県民の皆様にわかりやすく伝えていきたいと考えています。

庁内関係部局との連携や県、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。

新潟県気候変動適応計画の策定や進行管理は、県環境企画課で担当しています。環境企画課を中心とした庁内関係部局との連携は、県地球温暖化対策地域推進計画の策定など以前から行われてきましたが、こうしたつながりを生かしつつ、県の試験研究機関や地域機関での取り組みなど、より具体的な適応策の事例をセンターから伝えていくことが必要と考えています。

令和3年に行われた県民アンケートでは、「「気候変動適応」という言葉を知っていたか」との問いに対し、62.9%が「知らない」、24.4%が「聞いたことはあるが、内容はよく知らない」と回答する一方、高温や豪雨、豪雪などの異常気象への対応についての県民の関心は高いことも明らかとなりました。農林水産や防災、暑熱対策などの分野では、異常気象への対応をきっかけに、既に様々な取り組みがなされていますので、今後、こうした現場の様子を紹介するなどして、気候変動適応とは「こういうことだよ」、というイメージを県民の皆様や事業者にお示しできれば、と思っています。

現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。

新潟県は、気象に関しては北陸や長野県北部、東北日本海側との共通点が多いですが、経済・社会的には関東地方との交流が多い地域です。したがって、地域特性といっても「北陸」「信越」「東北・新潟」「関東甲信越」など、様々な見方ができる地域であるといえますし、どの地域ともかかわりがあることが新潟県の特性かな、と思うことがしばしばあります。

気候変動広域協議会について、当センターは関東に属していますが、隣接する東北や中部の広域協議会の活動にも参考とする情報が多くあります。実際、当センターは東北広域協議会の雪分科会にオブザーバーとして参加し、広域協議会の枠組みを超えた意見交換を行うなどしています。

新潟県の気候変動の影響とその適応策について、地域を超えた連携によって得られる情報も含め、あらゆる分野の情報を収集・分析していますが、それは地形や気象、産業構造や文化など、ふるさと新潟の特長や課題そのものを知ることにつながっていると感じています。それぞれの分野で気候変動に取り組んでいる方々のお話を聞き、課題を共有し、知恵をお借りしながら、センターの活動の裾野を広げていければと思います。

この記事は2021年12月20日の書面による回答に基づいて書いています。
(2022年4月8日掲載)

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