「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

インタビュー地域気候変動適応センターVol.17 香川県

香川県気候変動適応センター

香川県の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。

香川県は、四季を通じて温暖少雨で、気候温和な瀬戸内海の気候に恵まれ、自然災害の比較的少ない県として知られていますが、近年では、これまでに経験のないような大雨や猛暑などの異常気象による甚大な被害が報告されているとともに、その他の分野においても気候変動の影響が現れ、適応への取り組みが必要となってきています。そこで、気候変動影響及び気候変動適応に関する情報基盤強化とともに県民や県内事業者への情報提供を通して地域の適応策の取り組み推進のため、「香川県気候変動適応センター」を香川県環境保健研究センター(以下、環保研)に設置しました。

組織体制としましては、適応センター長に環保研所長を充て、他の研究員6名(兼職)と所内でワーキンググループを結成して対応し、本庁の環境政策課と連携して取り組んでいます。

香川県の地図

地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることなどがあれば教えてください。

令和2年度から、国立環境研究所との適応型共同研究に参加し、暑熱環境に関する気象学的観測を実施しています。今年度は、県内2箇所(市街地と郊外)の高等学校の教室、運動場、体育館などにWBGT計を設置し、WBGT・温湿度等の観測を実施しています。また、県内各地域の熱中症搬送者数のデータを収集し、WBGTとの関係性を明らかにし、熱中症予防に活用するための取り組みを行っています。

また、令和3年度から、国民参加による気候変動情報収集・分析事業に参加し、前述の熱中症予防・暑熱対策に向けた情報収集のほか、農業分野の情報収集として、農業士等を対象に県内農作物の気候変動影響に関するアンケート調査を実施しました。調査の結果、病害虫の増加や農作業の環境の悪化など、県内各地域で農作物への気候変動の影響が顕著になってきている現状を把握しました。さらに、オリーブやニンニクなど県の特産物を中心に生産者へのヒアリングを実施し、気候変動影響に関する率直な意見や地域ならではの適応策など貴重な情報を収集することができました。

さらに、初めての試みとして、本年11月に県民を対象とした気候変動ワークショップを開催しました。今年度は、新型コロナウイルス感染防止の観点からオンライン開催となりましたが、気候変動の影響事例の発表や身近な適応策の検討など、活発な意見交換がなされました。

今後は、これまで情報収集を行ってきた健康、農業分野に加えて、自然災害や産業等他の分野についても広く情報収集を行い、地域の特性に応じた適応策や将来予測などを行っていきたいと考えています。

庁内関係部局との連携や県、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。

香川県気候変動適応センターでは、県内の試験研究機関と気候変動影響に関する情報交換を行い、農業、水産業、林業などの現場からの情報を直接収集しています。また、気候変動に関する講演会やセミナー等について研究機関相互に情報提供を行い、知識の向上に努めています。

本庁の環境政策課では、地域気候変動適応計画の策定にあたり、適応策に関する情報共有や意見交換、本県の適応策の検討を庁内横断的に行うためのワーキンググループ(WG)を設置し、庁内関係部局との連携体制を整備しています。

課題としては、県民や事業者の方々に「気候変動」や「適応」についてもっと関心を持っていただくことです。現状は、「気候変動」と県民、事業者の方々との間に大きな距離があるように感じています。「気候変動」をもっと身近に感じていただくためにも、センター通信の発行やホームページ等を通じた情報発信に力を入れていきたいと考えています。

現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。

香川県は、自然災害が少なく、四季を通じて温和な気候とされていますが、そうした中でも、気候変動が徐々に顕著になってきています。こうした地域の気候変動影響を県民や事業者の方々に、より細かく、わかりやすく情報発信することにより、社会的、経済的負担が少しでも軽減されればと思っています。

気候変動の分野は多岐にわたり、当センターの活動も十分ではありませんが、県環境政策課と連携し、地域に足を運び、県民や事業者の方々の気候変動に対する率直な思いや適応策の取り組みを積極的に情報発信していくとともに、科学的データに基づき、県内、地域ごとに気候変動予測を行うなど、きめ細やかな支援を行っていきたいと考えています。

この記事は2021年12月17日の書面による回答に基づいて書いています。
(2022年3月16日掲載)