インタビュー地域気候変動適応センターVol.28 岡山県

岡山県気候変動適応センター

岡山県の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。

(1)岡山県の地域特性

岡山県は、山陽道の中央に位置し、中国・四国地方の交通の要衝として古くから重要な位置にあります。人口は約190万人で、そのうち約120万人(60%以上)が南部の岡山市と倉敷市に居住しています。

地形と気候に着目しますと、南部の平野、中部の丘陵地、北部の中国山地に大別されます。県内3大河川の高梁川、旭川、吉井川は、いずれも中国山地に源を発し、瀬戸内海に向かって一気に南下するため、河川延長が短く勾配が急なことが特徴です。また、夏・冬の季節風は、南側の四国山地や北側の中国山地を超えるときに多量の雨や雪を降らせてから吹き込むため、年間を通じて降水が少なく、「晴れの国」と呼ばれています。

さらに、地域ごとにより詳しく見ていきますと、瀬戸内海に面した南部は、温暖で降水量も年間を通して少なく、年間降水量は1,000mm~1,300mmほどです。中部は南部に比べて気温はやや低く、年間降水量は1,300~1,500mmとやや多くなっています。北部は特に冬の気温が低く、年間降水量は1,600mm~2,000mmで、積雪もあります。

これらの特性を活かし、南部・中部では清水白桃やピオーネ、マスカットなどをはじめとする果樹や野菜の栽培など、瀬戸内海ではカキやノリの生産などが盛んです。また、北部ではジャージー牛の飼育やヒノキ木材の生産などが行われています。さらに、製造業も盛んで、南部の水島工業地帯には石油、化学、鉄鋼など幅広い分野の企業が集積しており、全国に比べ第2次産業の生産額割合が高くなっています。

岡山県マスコット「ももっち・うらっちと仲間たち」

清水白桃、ピオーネ、マスカットの写真
ジャージー牛の写真

写真提供:岡山県観光連盟

(2)適応センター設置の経緯と組織体制

岡山県気候変動適応センターは、地方環境研究所及び地方衛生研究所である岡山県環境保健センターと、本庁の環境文化部環境企画課新エネルギー・温暖化対策室との共同で設置しています。

共同設置とした理由は、国立環境研究所や農業、水産業等に関する他の県立研究機関との交流がある環境保健センターと、国や市町村、庁内関係部局等とスムーズに連携できる新エネルギー・温暖化対策室とがそれぞれの特徴を活かすことで、気候変動適応法第13条第1項にある「区域における気候変動適応を推進するため、気候変動影響及び気候変動適応に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに技術的助言を行う拠点としての機能」を発揮できると考えているためです。

環境保健センター企画情報室と新エネルギー・温暖化対策室に各々担当を置き、連携を取りつつ業務に当たることとしています。

地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることがあれば教えてください。

当センターの設置は令和4年4月1日付けであるため、まだあまり大きな活動はできていませんが、まずはホームページやイベント等を通じて「適応」の概念を県民に周知することから取り組んでいます。

また、情報の収集に当たっては、国立環境研究所、県内の研究機関、岡山地方気象台などとの連携を図っています。さらに、ホームページを通じ、県民から岡山県内で「これって気候変動の影響かも?!」と感じた情報を常時募集しています。

今後も動画やラジオ等を通じた広報のほか、市町村や研究機関との情報交換などといった連携の充実に取り組んでいく予定です。

庁内関係部局との連携や県、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。

庁内関係部局との連携については、適応に関する情報を庁内向けホームページに掲載し、職員の意識醸成に努めているほか、広報担当部局との連携を密に行い、ラジオやテレビなどの県政情報ツールを活用した積極的な情報発信につなげています。

また、県では以前から県立研究機関(農林水産総合センター(農業研究所、生物科学研究所、畜産研究所、水産研究所、森林研究所)、家畜保健衛生所、工業技術センター、県立大学、環境保健センター)で構成する協議会を設けており、定期的な情報交換や施設見学、研究交流発表会などを行っています。気候変動についての情報交換も、この協議会を活用しています。

県民に対する適応推進については、様々な機会を捉え、情報発信を行っています。令和4年度は、県が主催する環境学習のイベントの講師を国立環境研究所の方に依頼し、専門家の立場から適応に関する講義をしていただきました。

一方で、事業者における適応の推進については、多岐にわたる適応の範囲をどのように事業者に意識していただくか、具体的なアプローチの方法に課題があると感じています。

現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。

岡山県における気候変動への適応は、これまでは各担当部局が個別に取り組んでおり、分野によっては庁内でも適応の概念自体はあまり認識されていない状況でした。今年度は地域気候変動適応計画の側面を持つ県地球温暖化防止行動計画の改定作業を進めており、横断的な取りまとめや潜在的な適応策の掘り起こしを通じて適応の概念が浸透しつつある状況と捉えています。

適応センターとしては、岡山県における現状の把握や県内外の自治体などにおける優良事例をはじめとする情報の収集、整理、分析及び提供並びに技術的助言をいっそう充実させ、県、市町村、県民、事業者それぞれの立場に応じた気候変動適応の推進の一助となるよう、引き続き努めていきたいと考えています。

この記事は2022年10月18日の書面による回答に基づいて書いています。
(2022年11月15日掲載)

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