「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

インタビュー地域気候変動適応センターVol.5 宮城県

東北初の地域気候変動適応センター設置

取材日 2020/7/3
設置機関 宮城県保健環境センター(環境情報センター)
対象 宮城県保健環境センター 副所長 佐藤秀彦
宮城県保健環境センター 研究員 横関万喜子
宮城県環境生活部環境政策課温暖化対策班 技術主幹 堀籠洋一
宮城県環境生活部環境政策課温暖化対策班 主事 高橋央

設置背景

宮城県気候変動適応センター設置までの経緯を教えてください。

高橋さん:本県において地域気候変動適応センター設置に関して、具体的に検討し始めたのは令和元年度からです。設置に向けて様々な方法を検討してきましたが、本県の地方環境研究所である保健環境センターでは、試験検査・調査研究を行う中で国立環境研究所との連携・協力体制が構築されていたこと、同センター内に環境情報センターという施設を設置し、環境に関する情報収集や情報提供を実施してきたことが決め手となり、保健環境センター(環境情報センター)に本県の地域気候変動適応センターを設置することとなりました。

保健環境センターの主な業務について教えてください。

高橋さん:保健環境センターは公共用水域の水質調査や大気汚染物質の常時監視など、保健・環境分野に関する試験検査・調査研究を実施している機関です。また、環境情報センターでは環境に関する図書やDVDなどの貸し出し、県民向けのセミナーの開催、小学生向けの夏休み環境学習教室の開催など、環境に関する情報収集や情報提供を積極的に行っております。

県内で把握される気候変動による影響の事例はありますか。

佐藤さん:水産分野ではこの辺では見ることができなかった魚が獲れるなどの影響が生じているほか、農業分野では様々な作物が影響を受けており、昨年の夏には高温による米の不稔障害が懸念されました。今後も高温が続くようであれば、対策として管理方法・栽培方法で対応していくのか、品種改良を考えなければならないのかは今後の課題です。

高橋さん:また、今年の冬は暖冬で雪が少なく、スキー場が営業できないという影響もありました。

堀籠さん:雪が降らなければ農業用水にも影響します。農業用ダムの貯水量が減り、春先に水が確保できなくて作付け時期がずれるといった影響も考えられます。

宮城県気候変動適応センターの取組

宮城県における気候変動適応センターの業務内容はどのようなものでしょうか。

高橋さん:保健・環境分野における気候変動に関する情報の収集・提供を行うほか、気候変動に関する県民向けのセミナーやシンポジウム、ワークショップなどを開催していく予定です。また、将来的には、気候変動に関する調査研究事業も行っていければと考えています。

環境省「気候変動適応における広域アクションプラン策定事業」について、宮城県ではどのような分科会テーマを検討されていますか。

高橋さん:テーマ2「海水温の上昇による魚種及び来遊量の変化への適応」とテーマ3「気候変動に伴う生物の季節攪乱にかかる国民生活の適応」に参加予定です。テーマ2は本県の水産部局が気候変動に関して大きな問題意識を持っていること、テーマ3は地域気候変動適応センターの役割に関連していることが参加理由です。

今後の課題や展望などについてお伺いできますでしょうか。

堀籠さん:適応と緩和という言葉が非常に難しく、あまり浸透してないように思います。研究を深掘りするというよりは、まずは周知していくことから少しずつ始めていきたいです。

高橋さん:緩和と適応という概念を理解してもらうためのツールがあるといいと思います。

佐藤さん:保健環境センターとしましては、地域気候変動適応センターの設置前から地球温暖化などの環境問題に関する情報提供や環境学習への支援を環境情報センターの業務として行ってきました。今後は気候変動に関する情報提供等についても、これまでの業務と合わせて実施したいと思います。

横関さん:環境情報センターの業務として環境学習への支援を行っています。今後は地域気候変動適応をテーマに加えて学習支援を行っていければと考えています。どういったテキストがいいか検討は必要ですが、国の気候変動適応センターなどと連携して工夫していければと思います。

この記事は2020年7月3日の取材に基づいて書いています。
(2020年9月4日掲載)