「気候変動」とは
「昔の夏はこんなに暑くなかった…」「こんな大雨は経験したことがない…」これはまさに気候変動を体感している声かもしれません。
近年、猛暑日が増加したり、集中豪雨などの極端現象が頻繁に起こったりしていて、私たちの生活にさまざまな影響を及ぼしています。このように、気温や雨の降り方などが数十年を超える長期にわたって変化する現象のことを「気候変動」といいます。
気候変動対策として初の世界全体の取り決めである気候変動枠組条約では、「気候変動」について「地球の大気の組成を変化させる人間活動に直接又は間接に起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生ずるもの」(環境省ホームページより引用)と定義しています。
A-PLATにおいても、「気候変動」という場合には、気候変動枠組条約の定義と同様に、人間活動が原因で生じる気候の変化を指すこととしています。
一方、人類は長い歴史の中で何度も温暖な時期や寒冷化を経験してきました。これらは、太陽の活動や地球の自転軸の変化、火山の噴火などの自然要因によって生じたものです。こういった自然由来の気候の変化も含めて「気候変動」と呼ぶ場合もあります。
人間活動が原因のものも、自然要因のものも、言葉としては同じ「気候変動」ではありますが、現在生じている気候変動は、影響の急速な進行が問題となっています。例えば、地球の自転軸は4万年程度のサイクルで変化し、気候変動をもたらす自然要因となっていますが、これが原因で約2万年前から起こった気温上昇と比べて、現在の気候変動は10倍のスピードで気温が上昇していることが明らかになっています。
(気候変動の要因の詳細については「1-2.気候変動の要因」をご覧ください)
「地球温暖化」や「異常気象」と「気候変動」は違うの?
気候変動に関するニュースや新聞記事では、「異常気象」や「地球温暖化」など、似ているようで違う意味の言葉が出てきます。それぞれの言葉の意味を見ていく前に、気候変動に使われている「気候」という言葉と、異常気象に使われている「気象」という言葉の違いを見ていきましょう。
「気候」とは、「ある程度長い期間における気温や降水量などの大気の状態のこと」(気象庁ホームページより引用)で、例えば「日本は、夏は暑く湿り気が多く、冬は寒くて乾燥する『気候』である」というように使います。
一方で「気象」とは、気温や気圧、湿度などの大気の状態や、その変化に伴って起こる雨や雪、風などの現象を指します。
次に、「異常気象」と「地球温暖化」について見ていきます。
「異常気象」とは、先ほど紹介した気温や雨、雪などの気象現象のうち、めったに起こらない規模のものを指します。気象庁では、原則として「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」(気象庁ホームぺージより抜粋)と定めています。つまり、人生のうちで数回程度しか経験することがない、激しい雨や風、高温などのことを指します。
また、「地球温暖化」とは、「地球全体として、地表、大気及び海水の温度が追加的に上昇する現象をいう。」(地球温暖化対策の推進に関する法律第二条第一項より抜粋)とされていて、気温や海水温が上昇する現象のことを指しています。
これらの言葉と「気候変動」との違いを整理すると、まず「異常気象」は、ある日ある時間に起こる異常な気温や大雨などを指している一方で、「気候変動」はある程度長い期間の状態の変化を指しています。また、「地球温暖化」は気温や海水温が上昇する現象を指していますが、「気候変動」は気温や海水温だけでなく雨の降り方なども含めた「気候」の変化を指しています。
気候変動と人間活動
産業革命以降、私たち人類は化石燃料を大量に消費し、温室効果ガスのひとつである二酸化炭素(CO2)を大量に大気中に放出してきました。このほかにも、ウシやヒツジなどの家畜を大規模集約的に飼育することで、その家畜が温室効果ガスの一種で気候変動の原因となるメタン(CH4)をゲップの形で大量に放出してきました(気候変動の要因の詳細については、「1-2.気候変動の要因」の項目をご覧ください)。
人間活動と気候変動の因果関係について、これまで世界の研究者による解析が進められていて、そうした研究成果を踏まえてIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)の略)は、第6次評価報告書の中で「人間活動の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断定しています(詳しくは、「5-4.IPCC第6次評価報告書」の項目をご覧ください)。
気候変動の影響を最小限に抑えるために、気候変動対策に関する世界の取り決めであるパリ協定では、産業革命以降の気温上昇を2℃より十分低く抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を追求するという目標を掲げ、温室効果ガス排出量の削減量等に関し、各国が決定する貢献(NDC:Nationally Determined Contribution)の提出を求めています。
一方で、2023年4月現在で、各国が提出したNDCでは、2℃目標を達成するには十分な削減量ではないという状況にあります(パリ協定について詳しくは、世界の適応「5-2.パリ協定」の項目を見てください)。
そのため、温室効果ガス排出量の削減を行う緩和策を更に強化することはもちろんのこと、気候変動の影響は既に世界各国で生じているので、その影響に対応する適応策を強化することも求められています。
(世界や日本での気候変動の影響やそれに対応する取組などについては、「3. 各分野の気候変動影響と適応」「4. 日本の適応」「5. 世界の適応」などの項目をご覧ください)
関連情報
- 日本天文学会「天文学辞典」※ミランコビッチ・サイクルについての説明はこちら
- 国立環境研究所「ココが知りたい地球温暖化 Q14寒冷期と温暖期の繰り返し」