地方公共団体の責務
適応策は、地域の実情に応じてきめ細かに推進することが求められます。そのため、国が実施する適応策とあわせて、地方公共団体やその区域の事業者等が各地域において実施する適応の取組が極めて重要となります。
地方公共団体には、その地域の自然的・経済的・社会的な実情に応じた気候変動適応に関する施策の推進に努めることが求められます。また、その地域の事業者等による気候変動適応を促進するため、地方公共団体が行う施策について周知を図ることとされています。
気候変動適応法 第四条(地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、その区域における自然的経済的社会的状況に応じた気候変動適応に関する施策を推進するよう努めるものとする。
2 地方公共団体は、その区域における事業者等の気候変動適応及び気候変動適応に資する事業活動の促進を図るため、前項に規定する施策に関する情報の提供その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
地域気候変動適応計画の策定・実施
適応策は、地域コミュニティ、事業者の事業活動、住民の生活にその効果が及ぶものです。そのため、地方公共団体には、その区域の住民、経済活動を守るために気候変動適応に関する施策を計画的に推進することが求められます。
適応法第12条では、すべての都道府県及び市町村に対し、地域気候変動適応計画の策定を努力義務としています。すべての都道府県及び市町村が対象となっているのは、気候変動適応に関係する防災、農林水産業等の施策において、市町村が計画策定や事務を担っていることが多く、これらとの連携が可能となることなども理由としてあります。
また、計画策定にあたっては、近隣の地域で状況が似通っている場合など、複数の都道府県や市町村で共同して計画を策定する方が適切であるケースも考えられます。そのため、複数の市町村や、都道府県と共同して地域計画を策定することも可能とされています。
なお、こうした計画策定を支援するための「地域気候変動適応計画策定マニュアル」がA-PLATで公開されており、どなたでも閲覧することができます。どのように計画策定がされているか興味のある方はぜひ見てみましょう。
【気候変動適応法 第十二条(地域気候変動適応計画)】
第十二条 都道府県及び市町村は、その区域における自然的経済的社会的状況に応じた気候変動適応に関する施策の推進を図るため、単独で又は共同して、気候変動適応計画を勘案し、地域気候変動適応計画(その区域における自然的経済的社会的状況に応じた気候変動適応に関する計画をいう。)を策定するよう努めるものとする。
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地域気候変動適応計画
地域気候変動適応計画とは、都道府県や市区町村等が主体となって、その区域における自然的、経済的、社会的状況に応じた気候変動適応に関する施策を推進するための計画を指します。
地域気候変動適応センター整備と情報発信
適応法第13条において、都道府県及び市町村は、地域の気候変動影響及び気候変動適応に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに技術的助言を行う拠点(地域気候変動適応センター)としての機能を担う体制の確保に努めることとされています。
地域気候変動適応センターは、情報基盤の強化や情報提供などに取り組んでいく上で重要な拠点です。また、その際、適応に関する知見を持つ研究機関と連携することで、効率的に適応を進めることもできます。さらに、地域の気候変動に関する知見を埋没させない観点や、気候変動に関する科学的基盤の強化について新たな検討が開始されるといった観点からも、地方公共団体の関連部局や地方環境研究所、大学などへの設置が進んでいます。また、その活動内容については、地域のニーズや設置機関が強みとするところにもよりますが、次の内容が想定されています。
- 地方公共団体の要望に応じて地域気候変動適応計画の策定に必要となる地域の気候変動影響及び気候変動適応に関する科学的知見の整理
- 地域における適応の優良事例の収集
- 地域における気候変動影響の予測及び評価
- 地域適応計画策定や適応推進のための技術的支援
- 地域における気候変動影響に関する様々な情報についてウェブサイト等を通した発信
- 地域の事業者や地域住民の適応に関連する相談への対応
- 活動により収集した情報及び整理、分析した結果等の国立環境研究所との共有
【気候変動適応法 第十三条(地域気候変動適応センター)】
第十三条 都道府県及び市町村は、その区域における気候変動適応を推進するため、気候変動影響及び気候変動適応に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに技術的助言を行う拠点(次項及び次条第一項において「地域気候変動適応センター」という。)としての機能を担う体制を、単独で又は共同して、確保するよう努めるものとする。 2 地域気候変動適応センターは、研究所との間で、収集した情報並びにこれを整理及び分析した結果の共有を図るものとする。
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地域気候変動適応センター
地域気候変動適応センターは、地域における気候変動影響及び気候変動適応に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに技術的助言を行う拠点です。
広域協議会の設置・参画
適応策の推進にあたっては、広域での防災対策、農業振興策、生物多様性の保全施策など、必ずしも単一の都道府県や市町村内で収まらず、ある程度広域で連携する必要があるケースも多くあります。また、共通する課題やニーズを持つ近隣の市町村などが情報交換・共有することはとても有益です。
こうしたことから、適応法第14条において、関係する国の地方行政機関、都道府県、市町村、地域気候変動適応センター、大学、研究機関、事業者、民間団体など地域の関係者との連携体制を構築するために、気候変動適応広域協議会を設置できることとされています。
具体的なこれまでの動きとしては、2017 年度より3カ年の計画で、環境省・農林水産省・国土交通省の連携事業として、全国6ブロックでの「地域適応コンソーシアム事業」が実施され、事業推進のための「地域協議会」が組織されました。
こうした会議体が発展し、各地域の気候変動適応広域協議会(全国7ブロック:北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州・沖縄)で、それぞれ地域連携が必要な気候変動影響をテーマとした分科会を立ち上げ、2020~2022年度にかけてアクションプランが策定されました。
【気候変動適応法 第十四条(気候変動適応広域協議会)】
第十四条 地方環境事務所その他国の地方行政機関、都道府県、市町村、地域気候変動適応センター、事業者等その他の気候変動適応に関係を有する者は、広域的な連携による気候変動適応に関し必要な協議を行うため、気候変動適応広域協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。
2 協議会は、必要があると認めるときは、研究所又は調査研究等機関に対して、資料の提供、意見の開陳、これらの説明その他の協力を求めることができる。
3 協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。
4 協議会の庶務は、地方環境事務所において処理する。
5 前各項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
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気候変動適応広域協議会
地域気候変動適応計画とは、都道府県や市区町村等が主体となって、その区域における自然的、経済的、社会的状況に応じた気候変動適応に関する施策を推進するための計画を指します。