国の研究機関の役割と連携

国の研究機関の役割

適応の推進にあたっては、研究機関による科学的知見の充実や、知見を集約した情報基盤の整備を図ることが必要とされています。研究機関によって、農業、自然災害、生態系、健康等の多様な分野における気候変動影響の予測・評価に関する総合的な研究が推進されることで、信頼できる情報に基づいた適応に関する取組を進めることができるようになります。

なかでも、気候変動影響及び気候変動適応に関する科学的情報基盤の中核を担う機関として、国立環境研究所があります。同研究所では、気候変動影響及び気候変動適応に関する情報の収集、整理、分析及び提供、都道府県や市区町村に対する地域気候変動適応計画策定に向けた技術的助言等などを行っています。

ただし、気候変動の影響・適応が関係する分野は多岐にわたるものです。国立環境研究所だけでなく、気象庁気象研究所、国土交通省国土技術政策総合研究所、土木研究所、農業・食品産業技術総合研究機構、森林研究・整備機構、海洋研究開発機構など、さまざまな国の研究機関が各分野の研究を担っており、適応の取組の推進につながっています。

国の研究機関同士の連携

国立環境研究所では、「気候変動適応に関する研究機関連絡会議」を設置し、関係研究機関間の連携協力をより一層強めています。同会議では、国や地方公共団体の施策や事業者・国民による適応に関する取組の支援を目的として、各機関が取り組んでいる研究内容の共有のほか、科学的知見の充実に向けた協力・連携体制などについて議論されています。

この連絡会議のもと、国の研究機関のほかLCCAC(地域気候変動適応センター)や大学なども参画する「気候変動適応の研究会」が設けられ、参加者間で最新の研究動向の共有や、連携や共同研究の可能性などについての議論がなされています。

気候変動適応に関する主な研究プロジェクト

気候変動の影響・適応に関してはさまざまな研究が取り組まれていますが、その主な研究プロジェクトの一つとして、気候変動メカニズムの解明や気候変動予測の不確実性の低減を行うとともに、ニーズを踏まえた高精度な気候変動予測データの創出とその利活用までを想定した研究開発を推進する「気候変動予測先端研究プログラム」があります。

また、気候変動適応の取組を支援する総合的な科学的情報の創出を目的として最新の科学的知見に基づいて影響予測・適応評価に関する研究を行う「気候変動影響予測・適応評価の総合的研究(S-18)」などがあります。

主な研究成果・公開データセット

日本における気候変動対策がより促進されるよう、文部科学省と気象庁が国内の気候変動研究プログラム等において作成された気候変動予測データを取りまとめた「気候予測データセット2022(DS2022)」が公開されています。また、地球規模/各地域の観測で得られたデータの収集・蓄積・統合・解析をベースとして、その情報を国内外に提供するデータ統合・解析システムDIAS(Data Integration and Analysis System)が2006年度より運用されています。

こうした研究成果は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書作成、パリ協定の目標の進捗状況を評価する仕組みである「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake: GST)」の評価、日本の影響評価報告書や地域の適応推進などに活用されています。

そのほか、日本においては、さまざまな研究機関が気候変動適応の研究に取り組んでいます。A-PLATでは、こうした研究機関の取組について事例を紹介していますので、ぜひご参照ください。