「令和4年度 気候変動適応に係る国民の理解度」調査結果紹介

国立環境研究所気候変動適応センターは気候変動影響・適応に関する情報の収集・整理・分析や研究を推進し、その成果を広く提供することで、政府、地方公共団体による気候変動適応に関する計画の策定や適応策の実施をはじめ、事業者や個人を含む各主体による気候変動適応に関する取り組みを推進しています。
その一環として、「令和4年度 気候変動適応に係る国民の理解度」に関する調査を実施しました(2023年1月31日(火)~2月1日(水)/ 2月8日(水)~2月9日(木)に実施)。ここでは、アンケート結果の概要をご紹介します。

【回答者の属性】

今回の調査は、性別、居住地域、年代で割付を行い、調査を実施しています。

図1 回答者の属性

【気候変動影響の認知状況と情報提供について】

気候変動の影響について「知っていた」とする回答は、今回調査では全体結果で74.1%(昨年度72.0%)となりました。令和3年度調査からの増加は2.1ポイント(有意水準5%で有意差あり)となっています。年代で比較をすると、「60歳以上」が最も認知度が高く83.6%、次いで「50-59歳」が72.9%と平均より高い結果となりました。また、地域ごとに大きな差はありませんでした。

図2 気候変動影響の認知

気候変動影響の情報提供の充足度については、「十分提供されている」4.2%、「ある程度提供されている」47.1%と計51.3%、約半数の方が気候変動影響の情報提供がなされていると回答しました。
「十分提供されている」及び「ある程度提供されている」の合計を年代別で比較すると、「60歳以上」が59.8%と高く、次いで「18-29歳」が49.0%となりました。地域では大きな差はありませんでした。

図3 気候変動影響に関する情報提供の充足度

【気候変動影響への関心】

気候変動への関心については「とても関心がある」19.7%、「関心がある」56.4%と計76.2%が気候変動の影響に関心があると回答しており、令和3年度より2ポイント(有意水準5%で有意差あり)増加する結果となりました。

図4 気候変動への関心

【日常生活の中で気候変動影響を感じるもの】

日常生活の中で気候変動の影響を感じるものについては、「夏の暑さ」の72.8%が令和3年度同様最も多い結果となりました。次いで、「台風や洪水、土砂災害などの増加」(71.6%)、「雨の降り方の激しさ」(62.3%)、と続きます。
地域別では「雨の降り方の激しさ」については北海道以外の地域、「冬の寒さや雪の降り方」については北海道・東北地域のほうが、それぞれ回答率が高い傾向がありました。
また、「台風や洪水、土砂災害などの増加」(※令和3年度は「風水害の増加」との選択肢)は令和3年度より10ポイントほど増加しました。

図5 日常生活の中で気候変動の影響を感じるもの

【気候変動の特に問題だと思う影響】

気候変動の影響の中で問題と思うものについての回答は、「気象災害の増加」(73.5%)や「農作物等の減少」(66.6%)「インフラ・ライフラインの被害」(64.0%)に対する回答が上位となりました。令和3年度と比較し、「渇水の増加」や「生活環境の快適さが損なわれる(R3年度は「生活の質が損なわれる」と表現)なども増加する結果となっています。
これらは地域の差が少なく、概ね全体的に回答率が令和3年度より増加していることがわかりました。

図6 気候変動の影響で問題と思うもの

【気候変動適応の認知と知りたい情報】

気候変動適応の認知は「言葉も取り組みも知っていた」5.6%、「言葉は知らなかったが、取り組みは知っていた」18.9%、「言葉は知っていたが、取り組みは知らなかった」20.1%という結果となりました。

図7 気候変動適応の認知

また、気候変動の認知経路は「テレビ/ラジオ」が最も多く60.7%、次いで「インターネット」(41.8%)、「新聞・雑誌・本」(32.0%)と続きます。60歳以上は「テレビ/ラジオ」と回答した方が76.5%と全体よりも10ポイント以上高い結果となりました。

図8 気候変動適応の認知経路

気候変動について知りたい情報では、「日本の気候変動の影響」(55.3%)「気候変動の将来予測」(42.8%)が上位となりました。

図9 気候変動の影響や適応について知りたい情報

【実践している気候変動適応への取り組みと今後実践したい取り組み】

実践している気候変動適応への取り組みとしては、熱中症対策に関することが41.7%、ハザードマップの利用などが31.7%、自然災害時の備蓄強化が30.4%となりました。
地域別の回答結果では、熱中症対策に関することが東日本以西で高めになっています。

図10 実践している気候変動適応への取り組み

現在は取り組んでいないことで、今後、実践してみたい気候変動適応への取り組みの回答は、「自然災害時の水・食料の備蓄の強化」が20.7%で第1位となりました。災害に対する備えの意識が各地域で高いことが読み取れます。

図11 今後実践したい取り組み

【気候変動適応の実践への課題】

気候変動適応の実践への課題では、取り組みに関する情報の不足が44.1%、経済的なコストが43.0%、気候変動適応の効果が不明瞭なことについて、が37.3%と上位3項目は令和3年度と同じ順位になりました。
また、「経済的なコストが掛かること」は「東北」以外のすべての地域で昨年よりも2ポイント以上増加しました。気候変動が実際の生活に及ぼす災害等についての危険認識は高まっているものの、それらに対する気候変動適応の実践活動については、むしろ課題が強まる結果になっているのかもしれません。

図12  気候変動適応の実践への課題

【気候変動適応の商品やサービスの認識】

気候変動適応の商品やサービスについてそれぞれ知っているかをお聞きしました。その結果、「知っている」と回答した方が最も多いのは「ハザードマップ」となり87.3%の方が「知っている」と回答しました。「熱中症警戒アラート」に関しても7割以上の方が「知っている」と回答したのに対し、「マイ・タイムライン」「高温耐性米」の取り組みについては認知が低い結果となりました。

図13 気候変動適応の商品やサービスの認識

【気候変動適応に関して政府に期待する取り組み】

気候変動適応への取り組みについての政府への期待では、「洪水、高潮・高波などへの防災対策」(58.7%)、「農作物の品質や収穫量、漁獲量への対策」(51.0%)、「渇水対策や水資源の保全対策」(46.3%)が上位となりました。防災と食料・飲料の保全に関わる回答が高い結果となっています。

図14 気候変動適応に関して政府に期待する取り組み

本アンケート結果を参考に、弊所気候変動適応センターでは引き続き気候変動適応の推進に向けた取り組みを進めて参ります。アンケートにご協力いただきました皆様に改めて感謝申し上げます。

<調査の概要>

1.調査目的

  • A-PLAT(気候変動適応情報プラットフォーム)等を通じた、気候変動適応センターが実施する今後の各種支援の参考とするため。

2.調査対象者

  • 居住地:全国7地域(北海道地域、東北地域、関東地域、中部地域、近畿地域、中国四国地域、九州・沖縄地域)
  • 年代:18歳~29歳、30代、40代、50代、60歳以上
  • 性別:男性、女性、(その他)※
  • 割付:各地域×年代×性別(※その他については割付の枠外とした。)

3.調査手法

  • インターネット調査

4.調査時期

  • 2023年1月31日(火)~2月1日(水)/ 2月8日(水)~2月9日(木)

5.調査結果の見方

  • nは回答者数を表している。
  • 回答率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までを表示している。このため、合計数値は必ずしも 100%とはならない場合がある。
  • 設問の回答には、単一回答と複数回答がある。複数回答の設問は、回答率(%)の合計が 100%を超える場合がある。
  • nが30未満の数値は参考値とする。

6.調査項目一覧

  • SA(シングルアンサー):単一回答
  • MA(マルチアンサー):複数回答 ※MT:マトリクス(表組)
(2023年6月1日掲載)

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