静岡県 麻機(あさはた)遊水地レポート

取材日 2021年11月12日
場所 静岡県/静岡市葵区 麻機遊水地

この度、生態系を活用した気候変動適応策(Ecosystem-based Adaptation : EbA)に関する取材ということで、気候変動影響観測研究室の西廣室長の現地視察、意見交換会参加に適応推進室の田中(弘)、濱が同行しました。


麻畑遊水地 第3工区遠景

■麻機遊水地について
麻機遊水地は静岡駅の北約5km、二級河川巴川の中流域に位置しており、元来沼地の散在する自然豊かな場所でした。巴川は麻機遊水地の下流で長尾川や塩田川と合流した後、市街地を抜けて清水港に注いでいます。かつて沼地は土地改良事業により水田として整備されましたが、1974年の七夕豪雨により流域市街地が大変な水害に見舞われたことを契機に遊水地への転換が始まりました。
この地域では平成16年に巴川流域麻機遊水地自然再生協議会が、平成28年にはその活動を発展的に継承する麻機遊水地保全活用推進協議会が設立され、静岡県、静岡市、地域住民、NPO、専門家、協力企業の参加のもと、自然環境の再生、利活用による地域の活性化・障碍者、高齢者等の自立支援など多様な取り組みが進められています。

■気候変動適応の面から
麻機では過去の痛ましい水害を経てその土地が持つ本来の川筋や地形を生かした遊水地の整備により減災、防災が可能になりました。わが国では気候変動により豪雨の頻度や強度が今後も増大することが予測されていることから、このような本来の沼沢地の特性を生かした遊水地への転換は気候変動適応のための自然を活用した解決策(NbS:Nature based Solutions)の好例として益々注目されるものと思われます。一方、広大な土地が平時において地域の人々に最大限に、しかも永続的に利活用できるものになるよう、その在り方が常に模索され続けています。


第3工区の植生景観。
手前に茶色く見えるのは絶滅危惧種タコノアシ。


この時期数少ない花の一つ、サクラタデ。
花が桜に似ているのでこの名がついたそうです。


第3工区景観


第3工区の池。向こう岸にオオバンの群れがいます。


第1工区遠景。
向こう側にわんぱく広場があり、遊具でこどもたちが遊んでいました。


第1工区 ミゾソバ。


第1工区 池のほとりにて


センターハウスの展示コーナー。
遊水地のおいたちや、動植物を知ることができます。

緑地視察の後はセンターハウスにて行われた保全活用推進協議会と専門家の意見交換会に参加しました。
意見交換会では運営の立場から、緑地が持つ健康への効果が目に見える形にしたいといった意見が出されました。また現在、近隣の学校による環境学習への利用などニーズは増えていますが、今後の安定した維持管理の継続のために、地域密着型の活動にとどまらず麻機にしかない魅力を広くアピールして遠方からの来訪者数も増やし、理解ある企業の投資を呼び込みたいといった意見も出されました。
麻機遊水地の整備はまだ途上にあり永続的な維持管理に向けてはこれからというところですが推進協議会の方々は皆この地への愛をお持ちであることが伝わってきます。すでにここには人と自然の望ましい共存の形が生まれ、すくすくと育っているのかもしれません。


自転車の練習をしている?お子さん。気持ちよさそうに駆け抜けていきました。

(2021年12月1日掲載)

ページトップへ