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インタビュー地域気候変動適応センターVol.7 栃木県

本庁と地環研の共同運営!栃木県気候変動適応センター

取材日 2020/8/5
設置機関 栃木県地球温暖化対策課 及び 栃木県保健環境センター
対象 栃木県保健環境センター 若色主任研究員
栃木県環境森林部地球温暖化対策課 玉田係長、山田主査、青木主査、山形主事

設置背景

栃木県気候変動適応センターの位置づけや体制について教えてください。

山田さん:栃木県は令和2年4月1日に気候変動適応法第13条に基づく「地域気候変動適応センター」を設置しました。行政内や国立環境研究所との連携を意図して、本庁にある「地球温暖化対策課」と地環研である「栃木県保健環境センター」が共同でセンター業務を担っています。体制は兼任を含めて10名。センター長を環境森林部部長が務め、センター次長を環境森林部次長と保健環境センター所長が担っています。センター職員には、保健環境センター2名、地球温暖化対策課4名が兼務で配属されています。県内の適応推進を図る中核機関として、情報の収集・整理・分析、普及啓発を行うほか、地域気候変動適応計画の策定やそのPDCA等における中心的な役割を担います。

栃木県気候変動適応センターの主な取組についてお聞かせください。

山田さん:本県では、地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画が令和2年度末に計画期間の終期を迎えるため、気候変動適応法に基づく地域気候変動適応計画と一本化した「栃木県気候変動対策推進計画(仮称)」の策定を行うこととし、令和元年度には、本県における気候変動影響を整理する「栃木県気候変動影響調査」を実施したところです。センターでは、この影響調査結果を基に、さらなる地域の情報収集や分析、市町への技術的助言に取り組むとともに、県民や事業者への情報発信を進めています。設置初年度である今年は、県民や事業者に「気候変動」や「適応」についてまずは知ってもらうことを重視し、県民が身近に感じる影響を取り上げる「栃木県気候変動適応センター通信」を毎月1号発行するなど、情報発信に注力しています。また、「国民参加による気候変動情報収集・分析事業」において、ワークショップや小中学校への出前授業、高校部活との連携調査などを予定しています。なお、気候変動に対しては、その影響による被害を回避・軽減するだけではなく、本県の強みを活かして、気候変動をチャンスと捉えた「攻め」の取組も検討しているところです。今後、県試験研究機関や県内企業へのインタビュー等を通じて、本県の強みとなる適応策や適応ビジネスにも着目していきたいと考えています。

若色さん:センター通信では、これまで日傘の活用や熱中症アラートなど、熱中症対策についてお伝えしてきました。先日発行した第5号では、県畜産試験場へのインタビューを基に、乳用牛の適応策を取り上げたところです。乳牛の快適温度は20℃程度までといわれていますが、酪農が盛んな県北地域でも夏場に30℃を超える日が増えています。このような中、高温による乳量・乳脂肪率の減少といった影響が危惧されているところです。そのため、本県の研究機関では、乳牛の首元に地下水をかけるといった対策など、効果的な乳牛の暑熱対策を研究し、「生乳生産量 本州1位」である本県の酪農を支援しています。今後も適応に資する様々な取組について、センター通信を通じて発信していきたいと考えています。

適応推進と普及啓発

関係部署や研究機関にヒアリングを行う際、何か工夫されていることはありますか。

若色さん:各研究機関の情報を収集する際、まずは、各所が発信する報告書などを対象にしています。各研究機関が「気候変動適応」を一番の目的として研究することは少ないですが、その研究結果が「適応策」につながっているものは大いにあると考えています。このため、我々がアンテナを立て、各所にアプローチしています。行政機関内でも自らの業務が「適応」と関連していると捉えられていることはまだまだ少ないため、関係先へのインタビュー等では、先方の得意分野で話を伺う姿勢で臨むとともに、なるべく実際に会って話をすることが重要だと思います。

山田さん:本県では、気候変動対策の推進を目的に、副知事をトップとした庁内部会を設置し、関係課で構成するワーキンググループで計画策定や適応推進を検討することとしています。このトップダウンで部局横断的な検討を行う体制は、幅広い分野に及ぶ適応に関して、全庁一丸となって検討・取り組んでいくための推進力となっていると感じています。今後、さらに各課のシーズ・ニーズをよく把握して、センター業務を進めていきたいと思います。

現在取り組まれている普及啓発について教えてください。

山形さん:昨年度からミストテント貸出を通じた普及啓発を進めています。ミストテントは、テントによる遮熱と、ミストの気化熱に扇風機の風を加える複合的な対策により、体感温度を下げることができるものです。これを県や市町のイベントに貸し出し、身近な気候変動影響である「熱中症」への対策をきっかけに、イベント参加者に「気候変動」や「適応」について知ってもらうことを目的としています。昨年は18件の貸出を行いました。また、環境関連イベントでは、身近に感じている気候変動影響(さくらの開花、暑さ、短時間の大雨、雪の降り方)や取り組んでいる適応策(熱中症予防のための水分補給・日傘使用、ハザードマップの確認、虫よけスプレーによる虫刺され防止)についてシールアンケートを行っています。シールアンケートにある「虫よけスプレーによる虫刺され防止」では、「虫よけスプレーは使うけど、気候変動?」という疑問に対して、「暑さで蚊の生息域が拡大すると、ウイルスを持った蚊に刺されるリスクも大きくなるという意味で、『適応策』なのですよ」とお答えすることで、気候変動影響がとても幅広い分野に及ぶことをお伝えするきっかけとしています。「そんな影響も考えられるの!?」と興味をもって聞いていただける鉄板ネタです(笑)

適応を担当されるやりがい、今後の展望についてお聞かせください。

山形さん:私は矢板市の交流職員としてこのセンターでお仕事をしています。県では膨大な科学的知見や文献を解析し、広く県民に啓発するという重要な役割を担っており、分析の仕方や有効な啓発について、日々勉強しています。また、県だけでなく市町も気候変動適応を進めていくことが必要です。市町が適応を進めていく中で、県からどのような助言を受けることができるのか、市民に対しどう伝えたら良いのか、どんな情報を知りたいのか、市町の目線に立ち、県と市町との架け橋としての役割も果たしていきたいです。

山田さん:気候変動適応は幅広い分野に及ぶため、できることはとても多いし、部外者は一人もいない社会問題だと考えます。このため、県庁各課はもとより、市町、県民、企業、大学、地域などの様々なステークホルダーが一体となって取り組む必要がありますが、一方で、幅広い分野の膨大な情報や難解な将来予測を分かりすく共有しなければならないという課題があります。このような中、地域センターが、「科学的知見」と「社会実装」をつなぐコーディネーターとしての機能を果たせることが重要だと思うので、難しい業務ですが、頑張っていきたいです。

青木さん:センターの仕事は、様々な分野の方と如何に連携して、気候変動を自分事にしていただくかが大切だと感じています。私の職種は行政職です。これまで土木、産業、農業等、渡り歩いてきた経験を活かし、「適応」の機運を高める一助になれるよう頑張ります!

玉田さん:センターの業務は、適応策の普及啓発を行うなど、一見地味ではありますが、県民の生命、財産を守ることにつながる重要なものであり、サポート役としての仕事にやりがいを感じています。近年の豪雨災害など、気候変動の影響は我々の生活に密接に関連していることを県民の皆様に広く知っていただけるよう、取り組んでいきたいと思います。

若色さん:地球温暖化に関する業務は、仕事の成果を形や数字に示しにくいため、必要性を理解いただくことの難しさを痛感しています。しかし、気候変動は、すべての人に影響を及ぼし、先送りにはできない重要な問題であり、本県のセンター立ち上げに関われていることにやりがいも感じています。難解なデータも、やさしく説明することに努めることで、県民一人ひとりの身近な課題であると理解されることを意識しながら、地域の気候変動適応という重要な課題に取り組んでいきたいです。

この記事は2020年8月5日の取材に基づいて書いています。
(2020年10月15日掲載)

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